本場米国の黒人教会で音楽指導をするゴスペルアーティスト、Bro.Taisuke(ブラザー・タイスケ)さんによるワークショップが16日、久遠キリスト教会(東京都杉並区)で行われた。会場には、ゴスペルファンやクワイヤ、一般の観客ら約130人が集まり、ゴスペルを聴いて、歌って、その魅力を堪能した。
新潟出身の Bro.Taisuke さんは20代の頃、米ニューヨークの黒人街ハーレムでゴスペルに出会って以来、日米で10年以上にわたってゴスペルの指揮者・ソロシンガーとして活躍している。2011年からは神学を学ぶために渡米し、現地の黒人教会で音楽責任者として奉仕。現在はルイジアナ州ニューオーリンズを拠点に、合唱団の指揮者、ソロシンガー、ボイストレーナー、プリ―チャ―(説教者)として多岐にわたる活動をし、地元の新聞やラジオでも紹介されたほどだ。
今回のワークショップは、「ゴスペルキャラバン」と銘打たれたツアーイベントの一環として行われ、Bro.Taisuke さんは、東京、新潟、名古屋、大阪など日本各地を約2週間にわたって巡り、この日が千秋楽となった。Bro.Taisuke さん本人が、本場米国でも認められたパワフルなゴスペルを歌うだけではなく、ワークショップでは参加者も一緒になってゴスペルを学び、イベントの最後には全員で歌った。
「ゴスペル」とは、もともとイエス・キリストがもたらした良い知らせ(福音)のこと。一般には「黒人教会の賛美歌」として認知され、米国では音楽の一ジャンルを築き、多くのスターが名を連ねている。その歌詞は、黒人として差別を受けてきた人々が、恨みの言葉ではなく、命があることへの喜びや感謝を、シンプルで真っ直ぐな言葉でつづったもの。困難があっても「神を信じて、与えられた試練を戦い抜く」という、力強いメッセージが込められている。スタイルも決して形式ばったものではなく、誰もが一緒に歌える「会衆賛美」がベースとなっている。
「僕は住んでいる場所柄なのか、恨み節はどうも性に合わない。都会でははやっているみたいですが、うちの近所(ニューオーリンズ)でははやってないようです」と、歌の合間に軽快な口調で語る Bro.Taisuke さんの話に、自然と集まった人たちが耳を傾ける。参加者の約半数がクリスチャンではなく、教会に足を踏み入れるのすら今回が初めてだというから、この「ゴスペル」というものに人知を超えた力を感じずにいられない。
この日、クワイヤとして加わった40代の男性は、「神様を知らない人を神様につなげる機会をつくるツールの一つがゴスペル。ただ黒人のまねをして楽しむだけの音楽じゃない」と語る。また同じくクワイヤとして参加した女性は、「私もクリスチャンの家庭で育った。日本人の壁にぶちあたって閉塞感を感じている人たちにも、『本当は自由にありのままに喜んで賛美していいんだよ』と伝えたい」と語った。