2015年キリスト者メーデー集会(同実行委主催)が4月29日、東京都千代田区のカトリック女子修道会「幼きイエス会」(ニコラ・バレ)で開催された。カトリック教会における労働者の守護聖人である聖ヨセフの祝日(5月1日)に合わせ、毎年この時期に行われている。今年のテーマは「貧困と格差なき社会を目指そう」で、カトリック信者ら100人近くが参加した。
第1部では、日本カトリック正義と平和協議会事務局長の大倉一美(かずよし)神父があいさつし、首都圏なかまユニオン代表の石川正志さんと東京JOC代表の宇井彩野さんがスピーカーとして登壇。それぞれの立場から日本の労働者を取り巻く問題や労働者が抱える問題について語った。
非正規労働者の実態に詳しいい石川氏は、具体的なデータを使って非正規労働者の増加を指摘。これが日本の格差を拡大させている原因の一つだと語った。現在の労働政策の不備についても言及し、「今の政権を俯瞰(ふかん)しているだけではなく、日常的な運動が必要だ」と強調した。
現在全国4地域で活動する、カトリック青年労働者連盟(日本JOC)の東京代表である宇井さんは、青年労働者の現状について語った。宇井さんによると、現在、人を信じられず、人と深く関わることを恐れ、働くことに恐怖感を持つ若者が増えているという。
JOCでは、そうした若者に対しアプローチしている。まずは、その人の現状をよく把握することから始め、すぐにアドバイスしたり、解決を急いだりはしない。それぞれの生活の中でできる小さなことから、大きなアクションまで共に歩み、一緒に動いていくことが大切だという。困難を抱える若者と一緒に取り組むことで、メンバーたち自身も成長し学んでいると、JOCの働きについて語った。
第1部の最後では、イエズス会社会司牧センターの安藤勇神父が登壇。日本にも貧困が存在すると話し、貧富の格差に対するカトリック教会の考え方について、ローマ教皇フランシスコと先代の教皇ベネディクト16世が出した公的文書から説明した。
安藤神父は、自由市場経済による成長は、一部の人間を「廃棄物」のように社会の外に締め出してしまい、それ自体によって社会問題を解決できるものではないと言う。「市場が擁護し、尊重しなければならない第一の資本は人間」だとし、人間が経済社会活動の中心であり、目的であるべきだと語った。
また、「神様は全ての人間の上に太陽を照らしてくださる」と言い、「大自然は全ての人のために造られており、私たちはその自然を守るために遣わされている」と語った。「聖書に出てくる『貧しい人』と、現在言われる『貧困』とは意味が全く違う」と話した。
上位1%の富裕層の所得が増え、格差が拡大していると主張する、フランス人経済学者トマ・ピケティの考えについても紹介。米国では上位1%はまさに富豪といえる存在だが、日本では年収1500万円以上といった程度。「日本の格差は、所得の低い人が急増している『下方向への格差』だ」と、日本の特徴について説明した。
第2部では、礼拝堂で労働者ミサが執り行われた。説教を取り次いだ安藤神父は、シングルマザーやその子どもたち、ホームレスの人たちに対して、詩編8編の言葉が信仰者に必要なことを教えていると説いた。
マタイによる福音書20章1〜15節の中で、「誰も雇ってくれないのです」と言った労働者にぶどう園の主人が賃金を支払ったという記事からは、「無償の好意が経済活動の中にも必要」だという前教皇ベネディクト16世の言葉を伝えた。「待っていても仕事がないこの人たちにポケットマネーで支払う」という行為があってもいいのではないかと話した。
最後に、職場のいじめ、長時間労働、サービス残業などで苦しんでいる人たちのために祈りがささげられ、日本カトリック正義と平和協議会が日本国憲法の大切さを広げるために作った「平和の大工」(作詞・作曲:シスター・山本きくよ)を合唱して閉会した。