4月に発売された浜矩子(はま・のりこ)著『地球経済のまわり方』(筑摩書房)。実にわかりやすくて面白い本である。帯には「中学生からわかる超入門・グローバル経済」と書かれている。実際に中学生が読んだらどう思うか分からないが、大人なら経済学の教科書を読んだことのない人でも読める。教会では教わることのない、一見難しそうな地球経済のまわり方が、身近な本となった。
この本は、経済の基本をまず踏まえつつ、日米欧の経済の実態を明らかにした上で、地球規模に拡大した今日の経済を「グローバル・ジャングル」と呼び、生態系のようにとらえてその展望と共生を説いている。
著者の浜矩子氏はカトリック信徒であるが、本書にはそのことも記されている。また、第1章で新約聖書を引き合いに出しているところは、聖書に親しんでいる人にとっても興味深い。
例えば、神の国を果樹園に見立ててキリストが弟子たちに語ったたとえ話(マタイ20:1~16)に、「弱い者が不平をいう競争経済と、強い者がやる気をなくす分配経済との関係」がとてもよく示されているという。また、ルカによる福音書11章11~13節を引用して、実際の経済と政策では「魚ならぬへび、卵ならぬさそりを子どもに与えて悲劇を呼んだ事例は、経済史の中においてあまりにも多い」と評している。
著者は同志社大学大学院で教鞭をとる傍ら、著書や講演活動も多い。教会関係でも、最近では5月24日に小金井市民交流センターで行われた集会「『いのちと平和』を大切に!今、私たちに出来ることは?」で、松浦悟郎司教(カトリック大阪大司教区補佐司教)に続いて、浜氏は詩編85章11節を引用して神の国のイメージを描きつつ、「平和と抱き合う経済 日本の選択とよびかけ」という講演を行った。
経済に関する研究調査や評論の実務経験、そして近年は安倍政権の経済政策に対する厳しい批判でも知られる著者だが、それはこの本にも表れている。一方、この入門書は、エコノミストの条件を記して経済を学ぼうとする人たちを導くとともに、単なる経済分析や評論にとどまらず、また絶望に終わらない、著者の信仰や人柄がにじみ出ているように思える。
中学生と大人が一緒に読んだら、どんな会話が生まれるだろうか?そして、読者は、著者の言う「グローバル・ジャングル」の中に自らの生活や生き方、そして将来への展望を見出すことができるだろうか?