英国の飢餓救済団体「オックスファム・インターナショナル」の出した報告書が、「驚異的」な地球規模的格差を明らかにした。オックスファムは報告書で、世界人口の1パーセントを占める富裕層が所有する富を全て合わせたものは、このまま行くと、2016年には世界の残りの人々が所有する富の合計よりも多くなるという見解を示した。
スイスのダボスで毎年1月末に開かれる「世界経済フォーラム」の年次総会(ダボス会議)直前に発表されたこの報告書で、オックスファムは「世界中の富が、一部の裕福なエリートたちの間に集中しつつある」と警告。その一方で、何億もの人が1日1・25ドル(約150円)未満で生活することを余儀なくされていると報告している。
「富:すべて手に入れても、もっと欲しくなるもの」というタイトルが付けられたこの報告書では、地球上で最も裕福である1%の中に入る、ビル・ゲイツ氏(米マイクロソフト社)や、マーク・ザッカーバーグ氏(米フェイスブック社)を含む80人のリストを挙げた。彼ら世界人口の1%を占める富裕層の富の合算は、2009年の44パーセントから、2013年には48パーセントへ上昇。この動向で行けば、2016年には50パーセントを超える可能性がある。
オックスファム・インターナショナルの代表であるウィニー・バイアニマ氏は、ダボス会議に先立って発表した声明で次のように述べている。「私たちの持っているものを全て足したものよりも、世界人口の1パーセントの人が多くの富を所有しているというような世界に、私たちは生きていきたいでしょうか? 世界的格差の規模は、かなりとにかく驚異的であり、問題が国際的な議題に上ることをよそに、富裕層とその残りの人たちとの格差は、急速に広がりつつあります」
バイアニマ氏は、世界の指導者たちが甚だしい格差の解消に取り組むことを約束したものの、「きちんと有言実行すること」に失敗したと非難した。
「私たちのリーダーたちは今、公正さや、より豊かな世界への妨げとなっている強力な既得権者と闘う時です」とバイアニマ氏は語った。
「エリート層にとって、通常ビジネスは損失を伴わない選択肢ではありません。格差の解消への取り組みの失敗は、後の数十年にわたり貧困との闘いをも生み出すことになります。貧しい人たちは、格差が広がることにより2回傷つくのです。彼らは、(経済をパイに例えると)もともと経済のパイのより小さな部分しか持っていませんから、ゆえに極端な格差は成長に響きます。周りに共有できるパイがあまりないからです」
ダボス会議の共同議長であるバイアニマ氏は、オックスファムの提示した見解を取り入れ、その協議事項に到達していくことを約束している。これは、経済政策を通じて、脱税を減らし、健康や教育に投資し、男女平等を推進するなどをはじめとする、さまざまな目標に到達することを各国政府らに対して呼び掛けるものだ。
英国の国際的なキリスト教援助団体である「クリスチャンエイド」のアドボカシー担当者、ローラ・テイラー氏は、報告書の見解に関し「不平等さは貧困との闘いを作るだけでなく、民主主義を弱体化し、また衝突をもたらすことになります」と意見を述べた。
「私たち一人ひとりは、この与えられた一つの惑星、地球を皆で分かち合って生きています。そしてすでに気候変動の問題への取り組みには苦労しているところです。一部の人による過剰な消費は、他の人々にとって、持続可能な開発・発達を促すことを一層困難なものにしています。私たちはただ一つの地球を皆で共有しており、どうやってこの有限である資源をより公正な方法で分かち合うか、考え出すことが必要不可欠なのです」