世界教会協議会(WCC)国際問題教会委員会(CCIA)とアジアキリスト教協議会(CCA)は、4日から8日までスリランカの首都コロンボで、「移住と人身売買(人身取引):現代の奴隷制か?」をテーマとする国際会議を開催した。スリランカ・キリスト教協議会(NCC−SL)が受け皿となって開催され、人身売買の被害者との連帯などを求める共同声明を採択した。
同声明文は、人身売買を「重大な人権侵害」と記すとともに、その結果は「経済的・社会的格差がもたらすとても恐ろしい結果であり、何百万人もの人々の脆弱さを増大させる」としている。
人身売買の被害者である移民は、しばしば「使い捨て商品」として使われていると、同声明文は述べている。声明文は、現代の奴隷制と性的搾取の一形態である人身売買をなくすWCC加盟教会の取組みを強調している。
この会議は、WCCの加盟教会とエキュメニカルな協議会、国連、および社会活動家や人権活動家と法曹らが集まって行われた。
フィリピン教会協議会のマリエ・ソル・ヴィラ氏は、フィリピンの文脈で人身売買の問題について発題した。同氏はフィリピンが外国為替送金の受取金額で世界第4位であると述べた。インドと中国及びメキシコもまた人身売買の中心地となっている。
「労働や性的取引のためにアラビア湾岸諸国やマレーシア、香港、日本、韓国、台湾、南アフリカ、北米やヨーロッパで売買されるフィリピン人が増えつつあり、そのほとんどが女性や子どもたちだ」と、ヴィラ氏は付け加えた。
WCC中央委員会の委員である、エチオピア正教テワヘド教会のイリカル・シフェロウ・メッセル氏は、シナイ砂漠における人身売買について語った。
メッセル氏はベドウィン(アラブの遊牧民族)の密輸業者が人間の臓器の窃盗に関わっていることから、シナイ砂漠における人身売買の特徴が極度の暴力であると述べた。メッセル氏は、このような恐ろしい犯罪によって、イスラエルに運ぶという約束と引き換えに、人身売買業者から要求される大金を支払えない人々が被害を受けていると述べた。
この会議の開催時にCCIA局長を務めていたマシューズ・ジョージ・チュナカラ博士は、この会議が人身売買の問題に取り組むエキュメニカルな提言活動を考案する助けとなったと述べた。チュナカラ博士は、これらの活動を通じて、教会が牧会ケアや変革のための行動とともに人身売買の被害者に連帯を申し出るだろうと述べた。チュナカラ博士はまた、これらの行動には移住と人身売買に関する諸問題についての教会の意識化が含まれるだろうと語った。
WCC国際問題プログラム幹事のセメグニッシュ・アスフォー氏は、人身売買の被害者たちを支援する上で教会同士の協力が重要であることを強調した。アスフォー氏は国際的でエキュメニカルな行為主体同士の協力が、人身売買に対する永続可能で効果的な解決策を発展させるために欠かせないと述べた。
また、この会議で発題した人身売買に関する国連の特別報告者であるジョイ・ンゴジ・エゼイロ氏は、「人身売買は人類の恥だ」と述べるとともに、人身売買を犯罪活動と呼び、それが世界で急増していると述べた。エゼイロ氏はこの慣行を止めることができた国や法人は一つもなく、この問題の大きさは途方もないと語った。
一方、この会議で、日本における強制労働としての技能研修制度や性産業における人身売買の問題について発題した、日本キリスト教婦人矯風会「女性の家HELP」ディレクターの上田博子牧師は、本紙からの電話取材に応じ、「何らかの組織的なネットワーキングを構築できれば」などと語った。