社会福祉法人九州キリスト教社会福祉事業団(大分県中津市、冨永健司理事長)は13日、同事業団が運営する中津総合ケアセンターいずみの園(同市)の新しい施設として「福祉の里センター サマリア館」をオープンさせた。床面積約900平方メートルの2階建ての建物で、高齢者や障がい者、子どもや子育て中の母親を支援するとともに、地域住民との交流の場を設けた複合型の施設。県内でこのような施設は初めてで、全国的に見ても珍しいという。
昨年から建設が進められ、先月末に完成。今月2日にキリスト教式で奉献式と竣工式が行われた。キリスト教の愛と奉仕の精神を基本理念とする同事業団は、イエス・キリストが話した「善きサマリア人のたとえ」から、同施設を「サマリア館」と名付けた。その名前にふさわしいように、地域の隠れた声にも耳を傾け、最後まで隣人に関わり続ける善きサマリア人の心意気を示していきたいとしている。
「暇はあるけど、一緒に話したり、作ったりしたい」と言うお年寄り。「自然に手助けしてくれる人がいて、あったかい雰囲気のところへ出掛けてみたい」と話す障がいのある人。子育て中の母親からは、「子どもが安心して遊べる場所、おじいちゃん、おばあちゃんがみんなを見てくれ、他の母親とも交流したい」などの声が届く。サマリア館は、こうした地域の人々の声に応える形でつくられた。
施設内には、デイサービスセンター、地域子育て支援センター、児童クラブ、児童発達支援、放課後等デイサービス、障害者生活支援センター、訪問看護ステーションなどが入る。また、フリースペースや住民に開放されたカフェもあり、さらに、地域の祭りや文化を次世代に伝えるための地域伝承スペースもある。地域の幅広い世代が自由に交流し、安心して集まれる場所を提供することで、共生社会の実現に貢献することを目指す。
日本では、2025年には高齢者人口(65歳以上)が3500万人に到達すると予想されている。国は「地域包括ケアシステム」の構築を急いでおり、サマリア館はその先駆けとして、新しい福祉モデルとなることが期待されている。