南アフリカで、移民や外国人労働者を標的とした襲撃が相次いでいる問題で、南アフリカやアフリカの教会指導者らが、こうした暴力を非難する声明を相次いで発表した。南アフリカではここ数週間に襲撃事件が多発し、同国政府は19日、これまでに7人が死亡したと発表。逮捕者は300人を超え、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、これまでに5000人余りが仮設避難所に避難していると伝えた。
南部アフリカ聖公会のタボ・セシル・マクゴバ首座主教は16日、南アフリカで最近増大している外国人嫌悪をやめるよう呼び掛ける声明文を同首座主教の公式サイトに発表した。アングリカン・コミュニオン・ニュース・サービス(ACNS)などが報じた。
ケープタウン大主教でもあるマクゴバ首座主教は、「南アフリカでアフリカ人の移民に対する襲撃が2008年に終わったあと、私たちは自国で外国人嫌悪の対立の終わりを目にしたいと望んでいた。しかし5年以上たって、その緊張がまた突発し、人々が死に、今や移民からの報復襲撃の亡霊を目の当たりにしている」と述べた。
マクゴバ首座主教は、「外国人も神の民であり、私たちが享受している尊厳や保護に値する」とし、こうした状況はズールー語(南アフリカで使われる言語の一つ)でいう「ウブントゥ(あなたがいるから私がいる)」ではなく、痛ましく非常に遺憾だと述べた。
また、「私は教会の同僚たちや他の宗教指導者たちに加わって、襲撃を終わらせるよう呼び掛け、全ての側に自制を求めるとともに、亡くなった人たちのご遺族に哀悼の意を表す」と述べた。
一方、同聖公会のデズモンド・ツツ名誉大主教の事務所があるデズモンド&リア・ツツ・レガシー財団は17日、「外国人嫌悪は南アフリカの無神経さと貧困を反映している」と題する記事を公式サイトに掲載した。
アパルトヘイトとの闘いで1984年にノーベル平和賞を受賞したツツ名誉大主教はその中で、アパルトヘイトに関する「真実和解委員会」が作られてから一世代もたたたないうちに、「私たちはアパルトヘイトの最悪の事態と同じくらいのヘイトクライム(憎悪犯罪)を目の当たりにしている」と述べた。
その上でツツ名誉大主教は、アパルトヘイト政権当時のピーター・ウィレム・ボタ大統領とその治安部隊のために祈ったのと同じように、「私は外国人嫌悪の暴力の犯人たちの目が開かれ、自らのやり方の過ちを見るように、彼らのために祈る」と記した。
また、南部アフリカ・カトリック司教協議会も16日、「カトリック教会は外国人嫌悪に反対です」と題する声明文を公式サイトに掲載。レビ記19章33〜34節とマタイによる福音書25章40節、そして1955年にアフリカ民族会議などが採択した「自由憲章」を引用して、外国人に対する最近の暴力的な襲撃を非難した。
さらに、南部アフリカ・メソジスト教会(MSCA)のジフォ・シワ総監督も、「外国人嫌悪に反対し行動しよう」と題する文章を公式サイトに掲載した。全ての牧師たちに対し、説教壇を離れて、18日から19日に奉仕をし、癒やしと一致、そして平和の言葉を語る共同体へと会衆を連れて行くよう呼び掛けた。
シワ総監督は、「私たちは全ての牧師たちに対し、他国出身の兄弟姉妹たちを襲撃するのをやめるように自らの共同体に訴えること、自らの隣人とは誰なのかを思い出してもらうこと、そしてキリストの愛を説くことを求める。説教壇の後ろから外国人嫌悪について語るだけでは十分ではない。神の民の中に存在するという奉仕が決定的に重要だ」と述べた。
「私たちは教会へ行くことで世界を変えることは決してないが、世界の中で教会であることによって、それを変えることはできるかもしれない」と、シワ総監督は付け加えた。
南アフリカ教会協議会の議長でもあるシワ総監督はまた、「外国人嫌悪に反対し行動するメソジスト」という別の記事も掲載した。シワ総監督は、同国の首都ヨハネスブルクに近いプリムローズ・メソジスト教会はここ1週間に住居を追われた何千人もの移民に食事を提供したと報告。これからも必要な限りそれを続けるとし、食事や衣料、石けん類、毛布を教会で提供するための寄付を拡大したいと述べた。
その中でシワ総監督は、19日昼にヨハネスブルクにあるベセスダ・メソジスト教会から平和行進を行うとして、参加を呼び掛けた。同教会は同日、フェイスブックで実際に行進が行われた様子を写真入りで伝えた。
これを受けて、世界メソジスト協議会(WMC)も17日、「南アフリカの外国人への襲撃に反対する声明」を発表し、それらの襲撃は明らかな人権侵害だとして非難。「私たち人類は一つ。みな世界中の不正義に反対して大きな祈り声を上げ続けましょう」と強調した。