キリスト教小学校・中学校・高等学校37校が参加する「2015キリスト教学校合同フェア」が21日、青山学院高等部(東京都渋谷区)で開かれた。
今回で4回目となるこの合同フェア。合同には「カトリック・プロテスタント合同」の意味が込められている。キリスト教学校は、カトリック系もプロテスタント系もそれぞれ独立した学校フェアを開催しているが、普段両者が接する機会はなかなかないという。合同フェア実行委員会のスタッフは、「カトリックとプロテスタントの違いではなく、共通点を見つけられれば」と開催の意図を話す。
合同フェアには1000人以上が訪れたが、親子そろってというだけではなく、祖父母を含めた一家全員での来場者も多く見られた。各学校ごとに設けられた個別相談コーナーでは、ブース前に長蛇の列ができた。女子校・男子校・共学校ごとに教師がアピールをする5分間スピーチリレーは、定員オーバーのため会場が変更になるほどの盛況ぶり。限られた時間の中で、学習環境や進学率など、それぞれの学校の特色を説明した。
「キリスト教の普遍の価値を学ぶことができる」「自分が一番愛されていると実感できる」というような、キリスト教学校としての教育方針に、メモを取りながら熱心に耳を傾ける来場者の姿が目立った。
「キリスト教の学校がどういう学校なのか、よく先生のお話を聞くのよ」と、子どもに話す親の声も。キリスト教学校の合同フェアということで、「宗教教育を意識した質問も多く聞かれる」と、来場者の相談を受ける教師は話す。また近年は、学校の雰囲気や安全対策などへの関心が高まっているという。
合同フェアの初めには、講堂でノートルダム清心学園理事長の渡辺和子氏による特別講演会「大切なもの」が行われた。36歳という若さで同学園の学園長に就任して以来、88歳になる現在も学校の現場で学生たちと向き合い続けている渡辺氏。自身のキリスト教学校での学生時代や、教育者としてのこれまでを振り返りつつ、キリスト教学校における教育について話した。
教え子の大学生から、「三だけ(今だけ、金だけ、自分だけ)」という言葉を教えられた渡辺氏。刹那的に生きる日本の人々を見ると、本当にその通りかもしれないと感じるという。時間、お金、自分。キリスト教学校はそれらを否定はしない、と渡辺氏ははっきりと断言する。ただし、本当に幸せになるには、今という時をどのように過ごすのか、お金はなんのために使うのか、人間は一人では生きられない、ということを学ばなければならない。そのことを教えてくれるのが、キリスト教学校であるのだという。
渡辺氏が考える学校とは、一人間を一人格に育てる場。人格とは、自分の意思で物事を考え、選択し、責任を取れる人間のことであるという。人間が、神に似せて人格を持つことができるものとして創造された以上、この3つをおろそかにすることはできず、学生一人ひとりが、神に似せて造られたかけがえのない存在であることを忘れてはならないと教えるのがキリスト教学校だと、渡辺氏は語った。
合同フェア実行委員会のスタッフは、「カトリックのシスターの話を聞く機会はめったにない。愛情を持った厳しさ、我慢や努力といった不自由さの中にある本当の自由、といった子どもと向き合う上で本当に大切な話を聞くことができた。プロテスタント・カトリックの枠を超えて、同じ形でかどうかは分からないが、引き続き合同フェアを開催できれば」とこれからへの期待を話した。