過激派組織「イスラム国(IS)」系のリビアのグループが15日夜、コプト正教会の信者21人を殺害したとする映像をインターネット上に公開した。AP通信などが伝えた。
映像は海辺で撮影されたもので約5分。黒づくめの戦闘員たちが、オレンジ色のつなぎの服を着た男性たちを連れ、海辺にひざまずかせ、一人の戦闘員が英語で「全ての十字軍らよ、もしわれわれと戦うならば、おまえたちの安全は願いごとに過ぎなくなるだろう」などと話したあと、一斉に男性たちを斬首した。
この戦闘員は、2011年に米軍に殺害された国際テロ組織「アルカイダ」の指導者ウサマ・ビンラディンの名前も挙げ、「ウサマ・ビンラディンの遺体を隠した海に、おまえたちの血を混ぜ入れることをアラーに誓う」と宣言。男性たちを斬首したあとには、「アラーの許しのもと、われわれはローマを占拠する」などと語った。ビンラディンの遺体は米軍によって水葬されたとされているが、イスラム教では土葬が一般的であるため、当時一部で反発の声が上がっていた。
AP通信によると、エジプト政府とコプト正教会は、映像が本物であると確認。米CNNによると、リビア議会もISの機関紙に掲載された写真により、殺害が本物だと確認した。エジプト政府は7日間の国喪を定め、アブドルファッターフ・アル・シシ大統領はテロとの戦いを誓った。
コプト正教会は声明で、信者らに「彼ら(殺害された21人)の偉大な国(エジプト)は、この邪悪な犯罪に報いることなく休むことはないと確信」するよう求めた。また、AFP通信によると、イスラム教スンニ派の最高権威機関であるエジプトのアズハル大学は、「野蛮な殺人」だと今回の殺害を強く非難した。
殺害された21人は、昨年12月以降にリビア中部で拘束された労働者とみられている。今月12日に公開されたISの機関紙は、リビアで21人のコプト正教会信者を拘束したと伝えていた。
映像は、文章でエジプト人女性カミラ・シェハタさんについても触れ、「この汚れた血は、カミラとその姉妹たちの復讐で、おまえたちを待ち受ける一部に過ぎない」などと脅迫している。
AP通信やAFP通信によると、カミラさんは、コプト正教会とイスラム教徒の間の対立で引き合いに出される人物。コプト正教会の司祭の妻であるカラミさんは、家庭内不和の後、2010年7月に数日間行方不明になった。発見されたカラミさんは、警察により教会に戻されるが、その後公には姿を消すようになった。イスラム教徒は、カラミさんがイスラム教に改宗しようとしたが、教会が不当に拘束しているなどと主張。その後発生した教会の爆破事件も、カラミさんの件が一因ではないかと考えられていた。