フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」の最新号の表紙をきっかけに起きた抗議行動により、西アフリカ・ニジェールのカトリック教会では、ミサやその他の活動を中止しなければならない事態となっている。
カトリック系通信社「カトリック・ニュース・エージェンシー(CNA)」の報道によると、ニジェールの司教らは、カトリック系の学校や医療施設、慈善団体の活動を中止あるいは延期せざるを得ない状況だという。同国の十数の教会は、シャルリー・エブド紙によるイスラム教の預言者ムハンマドを風刺する漫画が出版された以後、放火攻撃の対象となっている。また、これまでに少なくとも暴動により10人が殺害された。
暴動は1月中旬、ニジェール第二の都市であるザンデールで勃発した。その後、他の地域にも拡大。デモ隊は、教会やキリスト教系の学校、店舗に放火するなどしている。
「彼らは私たちの預言者ムハンマドの怒りを買った。われわれはそれが気に入らない」。ニジェールの首都ニアメでデモに参加したアマドゥ・アブドゥル・オウアハブさんはそう語った。
ニアメのミシェル・カーテイトガイ大司教は、ニジェールのキリスト教徒たちが「ショックの状態」にあると、バチカン放送局に語った。カーテイトガイ大司教
の教区にあるほぼ全ての教会が「完全に略奪された」という。
「何も残っていません。完全に焼失してしまいました。残っているのは大聖堂だけです」
カーテイトガイ大司教は、なぜ特にキリスト教徒がイスラム教徒の抗議者の標的となっているのか理解できないと言う。一方で、現在も続くこれらの暴力が「海外の事件を利用している」のではと疑っている。
一方、大司教は、ニジェールの人々が、ムハンマドの風刺画が西欧のキリスト教徒らの仕業であると思っているのは明らかだと話す。
「しかし、なぜこの道を歩み続けるのでしょう? 他人の信仰へ敬意を払うという姿勢は、一体どこへ行ったのでしょう?」
司教のローレント・ロムポ氏、アムブロイス・クエドラオゴ氏、ミシェル・カーテイトガイ氏らは、これら暴徒による攻撃を踏まえ声明を発表。司教らは、キリスト教に関係する活動の中断・延期は祈りを増し加えることになり、この数日に及ぶ「痛みを伴う事件」について、キリスト教徒たちが深く考えをめぐらすきっかけとなったと発表した。
また、「私たちは、この困難なときに連帯を表明している全ての人に、心から感謝しています」と、司教らは声明で述べた。
一方、教皇フランシス教皇は、ニジェールでの暴動を非難した。教皇は21日、毎週行われているサンピエトロ広場前での講演で、「神の御名で戦争をすることはできません」と聴衆らに語った。
「宗教的感情に、暴力、抑圧、破壊の根拠は決して存在しません」と教皇は言い、「和解と平和」「相互尊重と平和的共存が、皆のために一番良いことである」と話し、祈りを呼び掛けた。
ニジェールのマハマドゥ・イスフ大統領もまた、抗議行動を非難している。「宗教的な場所を略奪したり冒とくしたりしている人たち、また同国人、外国人にかかわらずこの土地に住んでいるキリスト教徒らを迫害、殺害している人たちは、イスラム教のことを何も理解していません」と、テレビ演説で語った。
パリで今月7日、風刺漫画家らを含む17人が、聖戦主義者によりシャルリー・エブド紙のオフィスで殺害された。この事件は、言論の自由と宗教を風刺する権利についての論争を巻き起こした。