イスラム教過激派組織「イスラム国」に拘束されている邦人2人のうちの1人、国際ジャーナリストの後藤健二さんが所属する日本基督教団田園調布教会(東京都大田区)では21日、定例の祈祷会が行われ、拘束されている後藤さんと湯川遥菜(はるな)さんのために祈りがささげられた。
湯川さんは昨年8月から、後藤さんは同10月下旬から連絡が途絶えており、20日になって、インターネット上にイスラム国による殺害予告の映像が公開された。イスラム国は映像で、72時間以内に2億ドル(約230億円)の身代金を払うように要求してきた。
同教会の高津俊(たかし)牧師によると、21日の祈祷会では、「2人の無事の帰りはもちろん、イスラム国の人々の心が柔らかくされますようにと願う祈りも多数聞かれました」という。高津牧師は、イスラム国の取った手段自体には賛同できないものの、「平和を求める心は皆同じだと信じています」と話す。
後藤さんについては、「欧米のやり方とアラブの価値観の相違が紛争の原因であり、そこでつらい思いをしている人について、後藤健二さんは報道という手段で平和を訴えていると思います」とし、「紛争の犯人を糾弾するのではなく、互いに平和を求めるために、現場の声、様子を報道して、全ての人が平和を願うために、後藤健二さんの存在はシリアの地に住む平和を願っている人々にとっても利益となるはずです。だから、そういう人を身代金目的や憎悪の対象とするのは間違っています」と語った。
殺害予告が出てから72時間となるのは、23日午後とみられている。期限まで残された時間は1日もない中、高津牧師は「アッセレーム・アレイクム(アラビア語で「あなたに平和があるように」の意味)というあいさつを互いに交わして、本当に平和を実現するために互いに理解し合いたいと切に願います」と語った。
仙台市出身の後藤さんは、映像制作会社を経て独立し、1996年に映像通信会社「インディペンデント・プレス」を設立。近年では主にシリアで取材を重ね、昨年5月末にはシリア出国を前に本紙のインタビューに応え、「私が取材に訪れる場所=『現場』は、『耐えがたい困難がある、けれどもその中で人々が暮らし、生活を営んでいる場所』です。困難の中にある人たちの暮らしと心に寄り添いたいと思うのです。彼らには伝えたいメッセージが必ずあります。それを世界に向けてその様子を発信することで、何か解決策が見つかるかもしれない。そうすれば、私の仕事は『成功』ということになるのでは」と、自身のジャーナリストとしての使命について語っていた。
一方、政府の「テロに屈することなく、国際社会のテロとの戦いに貢献する」という方針について、高津牧師は「最終的な目的は平和であって、争いではないと伝われば」と心の内を明かした。