イスラム国の略奪グループと西洋の収集家が、互いに直接連絡を取り合っているとみられ、イラクとシリアの古代教会から持ち出された歴史遺物の価値は、数十億円に上るとみられている。
ベルギー連邦警察協議会のウィリー・ブラッジマン会長は、イスラム国が「独自のネットワークを活用し、最終的なバイヤーと接触しています。彼らは、コレクターと直接取引をすることを望んでいるのです」と、英タイムズ紙に語った。
ブラッジマン氏はまた、略奪品の中には英国のバイヤーに販売済みとなったことがほぼ確実とされるものもあるが、それらの中で所在が分かっているものはないと伝えた。
略奪された遺物は、石油や武器などと同じ闇ルートを使用し、国境を越えて密輸された可能性が高い。イスラム国は、シリア東部の油田からの巨額の資金を確保しており、さらに修道院や教会、その他の古代遺跡などから貴重な骨董品を持ち出している。
6月にイラクの諜報機関幹部職員が英ガーディアン紙に語ったところによれば、過激派は、ダマスカスの西、山岳地帯であるアル・ヌバックの地域だけで、2300万ポンド(約42億9700万円)相当の品を盗み出したという。
グループは特にキリスト教の地域を標的としており、ブラッジマン氏は、教会の壁からはがされた壁画や石細工が最も一般的に取引されている品であることを確認している。
イスラム国は略奪だけにとどまらず、多くの場合、宗教的に神聖な場所を大々的に汚している。4世紀に建てられたシリアの修道院は、7月に暴徒らにより押収され、聖書の預言者ヨナのものであると考えられている墓は、過激派により破壊された。
ブラッジマン氏は、宗教遺跡への攻撃は、イスラム国が「彼らが侵入する地域社会の士気を弱体化させる」ことを狙いとしていると指摘する。「お分かりのとおり、これらは(キリスト教)文化の浄化のようです」
さらに、今月中旬には、イラクのカラコシュにある教会が、イスラム国の過激派により拷問室として使用されていることが明らかとなった。モスルの司祭であるアブ・アアシ氏は英サンデー・タイムズ紙に、カラコシュにあるバーナム・ワ・サラとアル・キアマの教会が囚人を拷問するために使用されていたと語った。
「中にいるほとんどがキリスト教徒で、彼らはイスラム教に改宗することを強いられています」「イスラム国は、全ての十字架とマリア像を壊しています」とアアシ氏は語った。