アッシリア民主運動は、イスラム国から市民を守るために「ニネベ平原防衛隊(NPU)」の編成を発表した。防衛隊員の多くはキリスト教徒の義勇兵である。ニネベ平原防衛隊は、過激派組織に強奪された土地を取り返すことも目標としている。
カトリック系インターネットメディア「アレティア」が報じるところによると、以前イラクにおけるアッシリア人の政治団体であったアッシリア民主運動が組織したNPUにおいて、500人から1000人のアッシリア人義勇兵が訓練を受けているという。
「NPUの使命は、まずはイスラム国のさらなる攻撃から残っているアッシリアの地を守ること、また、この悪名高いテロリストからニネベ平原にあるアッシリア人の故郷を解放するために、必要があれば軍事作戦にも参加することです」と、NPUを支援しまた注目を集めるためにプロジェクトに参与しているアメリカ・メソポタミア協会(AMO)はプレスリリースの中で述べた。
「自分たち自身や他の民族、宗教を持つ人々をイスラム国の攻撃から守るために、アッシリア民主運動は現在、NPUとして積極的に若いアッシリア人を義勇兵として募集し、訓練し、イスラム国との戦闘に備えています」
アメリカ・メソポタミア協会の運営者であり、バグダッド出身のデイビッド・W・ラザー氏は、このプログラムは「世界中に分散したアッシリア人のコミュニティー」、中でも欧米諸国のコミュニティーから資金提供を受けており、最終的には欧米諸国の政府からの助けを求めることを計画していると語った。
アメリカ・メソポタミア協会のプレスリリースには、「NPUが強大になるにつれ、編成された地域内での公的な防衛軍の一部となり、イラクに住む少数派の土地、家、そして生命の保護を確保します」とある。
「プロジェクト・イラクが進むにつれ、NPUは国の防衛軍の一部となるでしょう」とラザー氏。「私たちはNPUの編成を推し進めるでしょう、それが私たちの正義だからです」
NPUは、イラク政府が最も厳しい時期に自分たちを保護できなかったとの不満を持つ、アッシリア人キリスト教徒によって組織されている。彼らは、特にイラク北部を支配していたクルド人に対して、その責任があると考えている。
「クルド人はキリスト教徒に、『安心して、家にいてください。私たちが面倒を見ますから』と言ったのです。クルド人は『私たちはあまり多くの武器を手に入れられないのです。武器を持っていると問題になるかもしれません』と言って、キリスト教徒から武器を譲ってもらったのです」と、アメリカ・メソポタミア協会を公に支援するジェフ・ガードナー氏は主張する。
イラクのクルド人ゲリラ組織の一部が、イラク北部のバクファ村を含む一帯からイスラム国を締め出すことに成功している。イスラム国は、かつてバグダッドから243マイル(約391キロ)に位置するその地域のキリスト教徒95世帯を一掃した。
それでも、ゲリラ組織が街を奪還したあと、クルド人ゲリラ組織は約70人の義勇兵からなる村の民兵を組織した。多数のキリスト教徒が参加する民兵組織は、家族がいずれ帰還できるように、村の周囲を終始巡回している。
「私たちには助けがないと分かったのです」と、キリスト教徒による民兵の副司令官シーザー・ジェイコブ氏はAP通信に語った。「私たちは今もこれからも、私たちの土地を守るために私たち自身を守らなければならないのです」
クルド人ゲリラ組織は、バクファ村での成功に誇りを持っているように見受けられる。
「私たちは、キリスト教徒である兄弟とその家庭を守るために来たのです」と、その地域のゲリラ組織の司令官アブドル・ラーマン・カウリニー氏は言う。「協力と援助を継続しています。私たちはいつも共にいます」
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の中東専門家であるマイケル・スティーブンス氏によれば、イスラム国を一掃したあと、地域の安全を確保するのが最も重要だという。
スティーブンス氏は、「最も重大な問題のひとつは、イスラム国がその地域から撤退するとき、路上爆弾、地雷、罠をあちこちに設置したままにしていくことです。そのため、帰還したくてもできない状態になっているのです」とアレティアに語った。
10月の報道でも、爆弾が路上、民家、教会に設置されていることが報じられている。
この戦闘の中、人々は厳しさが予想される冬を迎えることになる。また、国連が最近、世界食糧計画(WFP)の資金不足により、イラク、ヨルダン、レバノン、トルコ、エジプトにおける支援を中断することを発表したため、追放された人々や難民にとってはさらに厳しい困難が待ち受けている。