シリアで拉致された後、イスラム国(IS)によって斬首された米国の人道支援ワーカーの両親は17日、彼らが通うインディアナ州インディアナポリスの教会で短い公式声明を発表し、シリアとイラクにいる捕虜たちのための祈りを求めた。
アブドル=ラーマン・カッシグ氏(26)――イスラム教への改宗前の名前はピーター・カッシグ――は、イスラム国に殺害された5人目の欧米人。16日に公開された動画では、カッシグ氏の見るに堪えない頭部が映し出され、また少なくとも14人の男性が首をはねられるシーンも映っていた。
インディアナポリスにあるエプワース・ユナイテッド・メソジスト教会で、ピーター・カッシング氏の母親であるポーラ・カッシグさんは、過去にカッシグ氏の元教師によって書かれた息子についての言葉を、短い公式コメントの中で読み上げた。
「もし、一人の人が現実主義者と理想主義者の両方になることができるとすれば、それはピーター君のことです」。この教師の言葉を引用し、ポーラさんは「ピーターはその両方(現実主義者と理想主義者)になることを達成したのです。ピーターの人生そのものが有言実行という言葉を表しており、一人の人間がいかに、周りに影響を与えることができるかということを示してくれました」と語った。
父親のエド・カッシグさんは、「アブドル=ラーマン、またはピート(ピーターさんの愛称)の方が馴染みのある人は、ピートのため、今夜の日没のときに、祈ってください。また、世界中の意志に反して捕えられているシリアとイラクにいる全ての人々のためにも祈ってください」と語った。
10月上旬、イスラム国は、医療従事者であり、元アーミー・レンジャー(米陸軍の特殊部隊)であったカッシグ氏を、英国人で人道支援ワーカーのアラン・ヘニング氏殺害後、次の欧米人捕虜として斬首すると脅迫していた。
昨年10月にシリアでカッシグ氏が拘束される前、両親はイスラム国に対し、イスラム教に改宗し始めていた息子を解放するよう繰り返し訴えた。両親は、息子の改宗が彼の心からのものであったと述べていた。家族の広報担当者によると、両親は息子のため、イスラム教とキリスト教の合同の告別式を計画しているという。
カッシグ氏は、2007年に米軍兵士としてイラクで短期間の任務に当たった後、2012年に再び中東を訪れた。彼は政治学を勉強中で、中東へ行ったのは春休みの旅行のためであったと、家族は語っている。
シリア難民の苦しみに心を揺さぶられたカッシグ氏は、救急医療技術者としてレバノンへボランティアに行き、その後難民に食料や医療品、民間人に応急処置の訓練を提供する援助団体を、20万人が死亡し、数百万人が住む場所を追われ行き場をなくしているシリアで立ち上げた。
イスラム国は、かつてアルカイダとも関係があった過激派グループで、イラクとシリアにおいて広大な領土を獲得。現在は米国主導の空爆のターゲットとなっている。