全米死刑廃止連合(NCADP)は9日、連邦政府に死刑を廃止するよう圧力をかけるために、人権団体、宗教団体、自由権擁護団体からなる連合を結成することを発表した。
15の提携する組織からなるこの連合は、「9千万人の強者(90 Million Strong)」キャンペーンと名づけられた。調査会社ギャラップによると、死刑反対を表明している9千万人は米国民の33%に相当するという。
現在死刑を廃止しているのは、米国内では28の州とコロンビア特別区(ワシントンDC)のみで、2014年にはこれまで7つの州で死刑が執行されている。連合の目的は、「9千万人の」米国民を動員して州ごとにロビー活動することで、積極的に死刑を運用している州に対して、連合が「不平等」であり不道徳な行いであると主張する死刑を取りやめさせることにある。
国内でのパートナーとして連合に加わっている団体には、キリスト教系社会正義団体「ソージャナーズ」「カトリック・ムーバライジング・ネットワーク」、合同メソジスト教会の「教会と社会総合委員会」など、宗教を基にしたさまざまな団体がある。
ソージャナーズの創立者で代表あるジム・ウォレス氏は、連合設立の記者会見の中で、死刑に反対することは政治的なスタンスの問題ではなく、むしろ政治的な境界線を容易く越えるキリスト教徒の道徳性としてのスタンスだと語った。
多くの人が保守右派を極刑の賛同者と見なしているが、ウォレス氏は保守的なキリスト教徒の多くが、極刑が聖書の教えに反することを理由に死刑反対の姿勢を示し始めていると信じている。
「この状況は受け入れられるものではなく、信仰のある人々は、神学的、政治的な垣根を越えて死刑反対でまとまろうとしています。なぜなら死刑は、神が創造したいのちに対する、最も聖なる約束を破るものだからです」とウォレス氏は強く主張した。「私は国中にいる、このような左派の団体に参加する宗教的保守派の人といつも話をします。その人たちは『これは終わらせないといけません。このことはもはや政治的な問題ではなく、私たちにとっては道徳の問題であり、聖書の教えの問題なのです』とおっしゃっています」と訴えた。
ウォレス氏は、社会における死刑の適用はしばしば欠陥があり、人種的バイアスに左右され、犯罪者として訴追されることから弱い人々を守ることができないとも語った。ウォレス氏は、社会正義は、最も弱い人々をどう取り扱うかにかかっていると、聖書を引用して語った。
「死刑囚監房へ送られる人の最も重要なたった一つの要素は、人種なのです。私たちはもうそれを受け入れることはできません。知的障害者、貧しい人たちが死刑囚監房にいるのです。貧しい人や弱い人から言えば、これは間違っています」とウォリス氏。「死刑は凶悪犯罪を審理にかけるのではなく、弱い人々を審理にかけているのです」と語った。
1976年以来、死刑判決を受け収監された人のうち149人以上が、執行前に解放されている。ウォレス氏は、死刑が存在しているが故に、いったい何人の無実の人が誤って処刑されたのか考えてしまうと述べた。
「これまで何人の人が国によって誤って殺されたか、神だけがご存知です。その人たちが、最も弱い人と言えるでしょう」とウォレス氏は言う。
記者会見では、全米刑事事件専門弁護士会(NACDL)代表のノーマン・ライマー氏も会見し、米国の刑事裁判のシステムは人間の不完全さで満ちており、どのような裁判であっても、法廷で出された結論をもとにせず死刑判決を出す権利はないようにすべきと語った。
「政府による死刑執行は、文明化された刑事裁判システムの中では存在し得ません。刑事弁護士は誰よりも、刑事裁判のシステムが間違いを犯しかねないものであることを知っています」とライマー氏は強く主張した。「全ての段階において、ヒューマンエラーでいっぱいです。そして人種的・民族的不均衡が長く続いているのです。このようなシステムが人間のいのちを奪ってしまうということがただ許せません」
世界では141カ国が死刑を廃止しているが、米国は自国を「政府がいかに個人とその人権を尊重するか」についてのすばらしい基準であるとみなしているにもかかわらず、この141カ国の中には入っていない。
「合衆国が自らを人権のリーダーとうたいながら、いまだにこの残酷で非人間的で、自らの品性を落とす死刑という行いを続けているのは恥ずべきことです」と、アムネスティ・インターナショナル米国の代表であるスティーブン・ホーキング氏は声明を発表した。「3分の1以上の州がすでに死刑を廃止しました。今や残りの州もこれに従うときが来ています」
この連合に参加している組織には、有色人種振興協会(NAACP)やユダヤ教改革派連合(URJ)、アライアンス・フォー・ジャスティス、憲法上の権利センターなどがある。