米国では、感謝祭(11月第4木曜日)翌日の金曜日は「ブラック・フライデー(Black Friday)」と呼ばれ、さまざまな店が大安売りをする。1年で最もショッピングが行われるクリスマス商戦の初日となる日だ。「ブラック」と呼ばれているのは、多くの店で黒字が見込まれるゆえんからだ。
米テキサス州ヒューストン市では、この「ブラック・フライデー」の代わりに「ブレス・フライデー(Bless Friday=祝福の金曜日)」と称して、現地の諸教会が協力して、恵まれていない人々への慈善活動イベントを行った。過度のショッピングと物質主義へ対抗する試みだ。
同市のメモリアル・ドライブ長老教会で、コミュニケーション・ディレクターを務めるエバ・カミンスキ氏は、ブレス・フライデーは「人々がショッピングから、奉仕へと焦点を変えることにつながる」と話す。「ブレス・フライデーは、私たちの教会員やスタッフたちで切に取り組んできたものです。その魅力は、自分自身ではなく他の人に焦点を当て、キリストの名で仕え、魂を建て上げていくことにあります」
このイベントは、ヒューストン地域の諸教会が2010年に始め、以来毎年行われている。
ブレス・フライデーの発案者であるチャック・フォックス氏によれば、今年のブレス・フライデーは参加教会の幅が広がった。「今年はウエスト・ユニバーシティ・バプテスト教会と、ヒューストンのクロスポイント教会に加え、カトリック教会として初の、シアトルのブレスト・サクラメント・カトリック教会も参加してくれました」とフォックス氏は言う。
「大きく、高所得層、主に白人が占める、郊外に位置するような教会から、小さくて、低所得層、黒人の、都市に位置するような教会、さらにヒスパニック移民のコミュニティーに仕える教会など、いろいろな教会が参加してくれました」
ブレス・フライデーでは、参加教会が多様な慈善活動を主体的に行う。困窮者への昼食の提供、地元の食料庫のための物資の梱包、公園のゴミ拾い、ホームレス施設でのボランティアなどだ。
これまで数年間にわたりブレス・フライデーに参加してきた教会の一つ、ヒューストンにある聖ヨハネ教会の広報ディレクターであるアンドレア・マイヤー氏は、同教会の今年の活動について次のように説明していた。
「今年、聖ヨハネ教会はこのイベントで、ヒューストンの繁華街にあるビーコンで、ホームレスの方たちに奉仕をすることに焦点を当てています」
「ビーコンは、ヒューストンの繁華街にあるデイ・センター(宿泊を伴わない施設)で、ホームレスの方たちへ食事や日用品を提供しています。教会からのボランティアが、ヒューストンにおいて必要な支援が行き届いていない方やホームレスの方たちに、何百もの温かい食事の奉仕をさせていただきます」
マイヤー氏は、「ブラック・フライデーのような、派手に消費をするという日に、人々に他の選択肢を提供することは、キリストにおいて神様のために人生を変えることをミッションにしている聖ヨハネ教会の、非常に大切な表現方法の一つです」と話す。
メモリアル・ドライブ長老教会のエバ・カミンスキ氏も同意見だ。「これはクリスマスの季節のスピリット(精神)です。仕えること、与えること、キリストの恵みを共有するスピリットにジャンプできる一つの方法となります」
メモリアル・ドライブ長老教会は今年、複数のプロジェクトを行った。教会が所有する食料庫に貯蔵する豆と米の梱包、負傷した退役軍人のための枕作りや、海外を行き来する船乗りたちのためにクリスマスプレゼントを詰めることなどである。
「何が素晴らしいかと言えば、諸教会が、本質的に、年間を通してこの種の活動を奨励しているということです!ブラック・フライデーは、私たち諸教会が、どのように一日一日を生きていくことができるのかということに、気づかせる機会をもたらしてくれました」
ブレス・フライデーの発案者であるフォックス氏は、大規模な商業化という世の流れにもかかわらず、ブレス・フライデーが「建設的に反文化的となる方法」となったことを指摘する。「人々は、何年もブラック・フライデーの日の長蛇の列と、開店時間に勃発する暴力などに対し嫌悪感を持っていました」と同氏は言う。
「ブラック・フライデーが、感謝祭自体にも影響を与えつつある現状を見て、今人々は非常に懸念を持っています。せめて一日でも、(買い物することから)立ち止まり、私たちの恵みを数えてみることをしてみませんか」