日本キリスト教婦人矯風会(東京都新宿区)は17日、北星学園大学(北海道札幌市)に対し、平和を脅かす言動に屈することなく大学の自治、言論、学問の自由を堅く守ることを要望する書簡を送付したと発表した。
「北星学園はキリスト教を理念として人格育成に尽くされ、平和宣言を発表されています。平和を脅かす言動に屈することなく大学の自治、言論、学問の自由を堅く守っていかれますよう、キリスト者女性組織として遙(はる)かに支援、声援するものです」などと同会は要望書で記している。
その上で同会は、同大学の学長、理事会、評議会、教職員、学生に対し、「北星学園大学の勇気ある行動を期待いたします」と要望書を結んでいる。
プロテスタントのキリスト教信仰を建学の精神とする北星学園大学は10月1日、従軍慰安婦問題に絡めて元朝日新聞記者である植村隆氏の講師採用に対して同大学に寄せられた抗議や脅迫への対応を説明した文書を、同大学長名で公式サイトに掲載した。
その後、学問の自由、大学の自治、言論の自由を守り、同大学や個人、家族への脅迫、嫌がらせを許さないとして、クリスチャンを含む学者やジャーナリスト、法律家などが同6日に「負けるな北星!の会」(略称マケルナ会)を結成した。
その後、同23日、警察は新潟県の男(64)が脅迫電話をかけたとして、この男を逮捕。同大学の田村信一学長は同24日、「本学に対する脅迫電話の容疑者逮捕について」と題する文書をサイトに掲載し、同大関係者の安堵の気持ちと警察関係者への感謝などを表した。
ところが、同31日、田村学長は学内会議で、一転して植村氏を来年度は雇用しない方向で検討していることを明らかにしたことが一部の報道機関によって報じられた。これについて同大学は、「今後、学内での様々な手続きが必要であり、本学としての最終決定ではございません」などとする文書をサイトに掲載した。
逮捕された男は、11月7日に札幌地裁がその拘留取り消しを決定したために釈放されたものの、任意で捜査が続けられ、札幌区検によって略式起訴された。朝日新聞などの報道によれば、札幌簡裁はこの男に14日付で罰金30万円の略式命令を出したという。
同日、東京都内で行われた鈴木範久氏(立教大学名誉教授)の講演会で、北星学園理事長の大山綱夫氏が登壇し、「内村(鑑三)や新渡戸(稲造)が願った日本とは違う方向へ急旋回していると思わざるを得ません」と短く、同大学に対する脅迫事件について言及した。
また、北海道新聞が8日に伝えたところによると、同じくプロテスタントのキリスト教主義大学である明治学院大学(東京都港区)の教員有志が、脅迫に屈せずに北星学園大学を支えるとする声明を出し、同大学に送付するとともに、それを書いた立て看板を東京と横浜のキャンパスにそれぞれ掲げた。
一方、マケルナ会は10日、同会の呼び掛け人の一人である小野有五・北星学園大学教授が12日昼に同大学のチャペル・タイムで「負けるな北星!―『北星学園のミッション』を考える」と題する内容の話をすることをフェイスブックで伝えた。
同大学は今のところ、この問題に関する最終決定を公表していない。