軍服姿でイエスの御名によって祈ったことで解任された、米海軍の元従軍牧師ゴードン・クリンゲッシュミット氏が4日、米コロラド州下院議員に当選した。しかし一方で、リベラルの間では同氏の当選について否定的な見解が出ている。
クリンゲッシュミット氏は、民主党候補の元教師ロイス・フォーナンダー氏に対し、コロラド州第15選挙区において70%の得票率で勝利した。クリンゲッシュミット氏によれば、同選挙区における登録済み有権者の共和党支持率は約43%だったという。
選挙当選後に出された声明で、クリンゲッシュミット氏は、各州民のバックグランドに関係なく、米国憲法修正第1条にある基本的人権(表現や宗教の自由を守ること)について闘うことを公約した。「ここまで来ることができましたのは、ボランティアスタッフの方々や資金を援助してくださった方々のおかげです。また投票していただいた方々のご支持を大変感謝しております。恐らく、わが州の共和党において初めて当選した聖職者として、政治的・宗教的事項に関わらず、私はこの地区の皆さんを代表して熱心に突き進んで参りたいと思っています。牧師で元軍人、また神学の領域で博士号を持つ者として、私は憲法修正第1条にある、皆さんの基本的人権・宗教の自由に関する権利を守っていきます」と述べた。
中には、コロラド州の同選挙区における今回の選挙結果に納得のいかないリベラル系メディアも存在する。カイル・マンティラ氏は米サイト「右翼ウォッチ(Right Wing Watch)」の記事の中で、クリンゲッシュミット氏を「急進的な、ゲイ反対を訴える宗教的権利活動家。『レズビアンの汚れた霊』に憑(と)りつかれている女性たちから、悪魔払いの儀式を通して悪霊たちを取り除こうとしたことがあると自慢している。『米国の法律は神の律法を反映させたものであるべき』とし、私たちの外交政策は聖書に基づいていなければならないと大々的に宣言している人物」と伝えている。
共和党員の中には、マンティラ氏の意見には同意できない者もいると、米ワシントンタイムズ紙は報じている。
「ゴードンは共和党を代表して発言しているわけではない」。コロラド州共和党代表のライアン・コール氏は、このように地元紙「デンバー・ポスト」に語った。「そうでなければ、(クリンゲッシュミット氏が)こうやって提案することは不正確で不謹慎になる」と言う。
クリンゲッシュミット氏は、16年にわたり従事していた海軍チャプレンを罷免された。「イエスの御名で祈るプロジェクト(The Pray in Jesus' Name Project)」のウェブサイトによれば、クリンゲッシュミット氏の監督者らは、同氏が公の場でイエスの御名で祈ったことと、支持者の集まるイベントに海軍の制服を着用し参加していたことが憲法修正第1条に違反するとし、同氏を処罰したという。
解任後、クリンゲッシュミット氏は、「中絶反対、同性婚反対、自由の権利」を支持する請願へのサポートを駆り立てるため、「イエスの御名で祈るプロジェクト」を開始。同プロジェクトがウェブサイト上で伝えるところによれば、同氏は、450万の請願書を米国連邦議会に提出し、公でイエスの御名で祈る権利を12の州において取り戻した。
2013年に、同氏はまた、同性愛、ゲイの結婚、悪魔の霊について自身が話す動画が右翼ウォッチのユーチューブ・チャンネルに再投稿され、動画の配信を停止するように右翼ウォッチ側と闘っていたことでも知られている。
同年に行った米クリスチャンポスト紙とのインタビューで、クリンゲッシュミット氏は、右翼ウォッチに対し不服の申し立てをするようになったと述べ、「私は彼らの窃盗行為、版権侵害、および私のオリジナル動画の内容に関する著作権侵害に、もううんざりでしたから」と語っていた。
コロラド州の候補者間の争いにおいては、空軍と海軍の両方での計20年間の軍隊経験と、自身が携わる慈善事業や中小企業経営者としての知識を背景とし、憲法修正第2条(銃器所持などの武装権)を支持、人工妊娠中絶反対、ビジネス促進、宗教的保守派として台頭した。
同性愛者の結婚に反対という立場をとったために、殺害の脅迫を受けたこともあるが、積極的に政治活動を行っていくことを約束した。同氏は4月、総選挙前の共和党予備選では、他の3人の共和党の挑戦者をしのいで71パーセントの勝利を収めた。
クリンゲッシュミット氏は、全米で投票を総なめにした共和党候補者たちの勢いに乗る形となった。また、コロラロド州では同じく共和党のコーリー・ガードナーが当選し、代わりに36年間落選したことのなかった現職の民主党上院議員マーク・ユーダル氏が落選。共和党はまたその後もアーカンソー州、コロラド州、モンタナ州、サウスダコタ州、ウェストバージニア州と、全米中で驚くべき連破を重ねていった。
共和党は全ての議席において十分な数を獲得し、連邦議会の上下両院で過半数を占めるに至った。来年1月7日、クリンゲッシュミット氏はコロラド州議会で宣誓を行う。