非戦・非暴力によるキリスト教平和運動団体「日本友和会」(JFOR)の田中良子理事長は、10月24日にフレンド・センター(東京都港区)で行われた国際友和会(IFOR、本部=オランダ)100周年記念大会・総会報告会「戦争と暴力から平和と非暴力の文化へ」で、「今後は韓国などアジアの隣国にも活動を広げていきたい」と語った。
「これからの100年をどう生きるかということを皆さんに語りかけていきたいと思います」と田中理事長。「私は韓国のお方たちから、私たちの活動は非暴力ということと同時に、和解・赦し・愛というようなことを大事にしているのですが、韓国の私たちの友人はそれを本当に実行していく友人たちです。ですから、私はまずお隣の国、そしてアジアの国の人たちと仲間を広げていきたいと思います」と語った。
田中理事長は韓国の友和会について、「1970年代にできたのですが、そして交流もあったのですが、現在韓国では活動がされていないので、以前のように共に協力していきたいと思います。東アジアの平和に私たちは努力していきたいと思います」と、報告会の終了後に本紙に伝えた。「赦しと和解についての韓国のお方たちの言動には心から敬意を覚えた」という。
田中理事長は、「特に世界の友人たちと力を合わせてやっていくということが、私たちは恵まれているグループなんです」と、友和会の国際的な特色について説明。「日本(友和)会は(創立)88年です。この間にいろいろな問題もございましたが、私たちも100年を立派に迎えられるように、頑張っていきたいと思います。特に、日本の憲法は、私たちが願っている『非戦で平和を』ということと同質のものです。ですから、これを本当に広げる運動を着実に実行していきたいと思います」と、今後の運動の展望を語った。
一方、「どうやってということを、これからは本当に真剣に考えながら、人々にこのことを伝えて、その人がそのように生きていくという、そういう運動にならなければならないと思います」と、今後の課題について述べた。
また、「選挙の場合もそうですけれども、日本の人は大変、こういう社会の問題に対して動かない、行動しない人が多過ぎると思うんです。それを動かすだけの、心に伝えるような、私たちの力の入った愛のある運動が足りないのかなと思っています。その切り口になる問題が日本の社会にはたくさんありますので、それを取り上げながら頑張っていきたいと思います」と話した。
国際友和会は、第一次世界大戦が勃発した1914年、若い青年たちが集まり、無益な殺傷を止めるよう求め、祈りと和解により世界の紛争解決に取り組もうと誓い合って出発した。これまでの100年の歴史で、米国のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師や北アイルランドのマイレッド・コリガン・マグワイア氏ら7人の会員が、ノーベル平和賞を受賞している。現在、世界40カ国あまりに支部があり、国連や国連教育科学文化機関(ユネスコ)に代表を送り出している。日本支部となる日本友和会も、国連経済社会理事会との特別協議資格を持つ国連NGOだ。
100周年記念大会は8月1日から3日まで、同会誕生の地であるドイツ南部の都市コンスタンツ(当時はスイス)で行われ、日本友和会からは学生2人を含む15人が参加した。1日目は記者会見のほか、核兵器のない世界実現を目指してのデモ行動やコンスタンツ市内の見学、分科会が行われ、第一次世界大戦時の福音派教会などに関する展示も行われた。また、2日には国際友和会と世界をテーマとしたワークショップが行われたという。
日本友和会は、今年盛り上がりを見せた「憲法9条にノーベル平和賞を」運動を早くから支援しており、今年夏まで国際友和会の理事であった日本友和会の飯高京子書記長は、今回の100周年記念大会中に憲法9条を守ることを訴える場を設けるよう準備委員会に強く要請してきたという。日本からの参加者は、同運動の賛同署名用紙も英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語のものを持参。憲法9条を解説するDVDやカトリック正義と平和協議会編の脱原発英文資料なども持参し、期間中にはドイツ友和会とワークショップ「核兵器廃絶、脱原発、被曝者救済」も共催した。
記念大会には世界40カ国から約350人が参加したが、参加者は日本友和会による訴えを聞き、署名に協力してくれたばかりでなく、各国に署名用紙を持ち帰って署名を集めると約束してくれたという。また、ノーベル平和賞受賞者であるマグワイア氏はこの時すでに憲法9条のために推薦文を送っており、南米ウルグアイのある会員は、南米アルゼンチン出身のノーベル平和賞受賞者アドルフォ・ペレス・エスキベル氏にノーベル平和賞推薦文の依頼をすると言い、ユネスコに参加している国際友和会代表は、国連事務総長宛に手紙を書くと申し出てくれるなどしたという。また記念大会後1週間にわたって開催された総会では、決議文に憲法9条を世界平和のために守ろう呼び掛ける文言が明記され、決議文をノーベル委員会へ送ることが約束されたという。
また、記念大会に参加した日米の若者たちが自発的に、8月6日に「ヒロシマ原爆投下の日」朝の祈りの会を計画し、原爆投下という惨事を引き起こした人類の過ちを謝罪する祈りをささげた。そして、「日米安全保障条約」の代わりに「平和のための安全保障条約」締結を提案し、日米の参加者14人が署名し、互いに握手を交わす記念すべき場が実現したという。
この日の報告会には、100周年記念大会・総会の参加者15人中13人が参加。国際友和会創立100年の意味と意義、非暴力の実際行動、核兵器と原発を含む核廃絶の現状と課題に関するワークショップ、ユースキャンプ、ベルリン平和の旅などの報告が行われた。
一方、「憲法9条にノーベル平和賞を」運動は政治的だと批判されることがあるというが、飯高書記長は「平和を守るために、キリストの証をするためには、やはりそれが許される環境を保持しないといけない。(特定)秘密保護法が発効したら、もういろんなことを言うだけでもストップがかかりますよね。だから、それがまだ許されるうちに、言いたくても言えない人の口を閉ざす前に、何とか若い人たちを守ってあげたい。その一心なんです」と語った。
さらに、1941年に北海道帝国大学(現・北海道大学)学生だった宮澤弘幸さんと宣教師のレーンさん夫妻が当時の軍機保護法違反容疑で特高警察に逮捕された「宮澤・レーン事件」に言及し、「だから、政治的だと言われれば、まさしくその通り」と飯高書記長。「キリストは混乱の中にいらしたじゃないですか。混乱の中で反逆者だと言われて十字架にかかって亡くなってくださったじゃないですか」と語った。また、「山上の垂訓はまさしくその通りですよ。『平和ならしむる者、その人は神の子ととなえられん』」と付け加えた。
なお、日本友和会が9月に発行した『平和憲法9条を世界の宝に! 国際友和会百周年記念大会・総会 参加報告集』には、100周年記念大会と総会の詳細がまとめられており、1部500円で頒布しているという。日本友和会について詳しくは、同会のホームページを参照。