特定秘密保護法に反対する牧師の会は、今年のノーベル平和賞受賞者が発表された10日、「憲法9条を保持してきた日本国民」が平和賞候補にノミネートされたことについて、「日本が世界の中で果たすべき真の役割が武力に拠らない平和づくりにあることを示す、大切な『しるし』となる」とする、朝岡勝、安海和宣共同代表名のコメントを発表した。
発表したコメントで2人は、今年の平和賞受賞者となったパキスタン出身の女子学生マララ・ユスフザイさん(17)と、インドの人権活動家カイラシュ・サティアルティさん(60)の2人に祝意を表した上で、「私たちが願っていた『憲法9条を保持してきた日本国民』の受賞は成りませんでしたが、ここに私たちは42万3685筆の署名をされた方々、戦後70年平和を希求してきたすべての国民とともに、計り知れない多くの労を果たされ、あらためて憲法9条の価値を知らしめてくださった『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会の皆さまに心からの御礼を申し上げます」と述べた。
さらに、「私たちの国はいま、立憲主義が揺らぎ、憲法9条の定める平和主義は空洞化し、主権者である国民の知る権利、思想、信条、良心の自由が著しく脅かされ、集団的自衛権行使容認の閣議決定以来、海外で他国との戦争に参加する準備が着々と進められつつあります」とし、「そのような中で今回のノーベル委員会がノミネートを受理したことは、日本が世界の中で果たすべき真の役割が武力に拠らない平和づくりにあることを示す、大切な『しるし』となるでしょう」と評価した。
今年のノーベル平和賞には、過去最多となる278の個人や団体が候補として挙がった。昨年3月に欧州以外出身の初のローマ教皇として就任し、紛争や貧困問題の解決を訴えてきた教皇フランシスコ(77)や、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長(70)、米情報機関による情報収集活動の実態を暴露した米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏(31)らが候補として挙がっていた。
戦争放棄をうたう憲法9条を保持する日本国民については、地元ノルウェーのオスロ国際平和研究所(PRIO)が最有力候補として予想するなど、関心を集めた。
報道によると、ノーベル委員会からはすでに、日本国民を来年も引き続き平和賞候補にエントリーする趣旨のメールが届いるという。「憲法9条にノーベル平和賞を」運動の実行委員会は、来年の受賞に向け署名100万人を目指すとしている。
この運動を始めたのは、神奈川県在住の主婦・鷹巣直美さん(37)。2児の母親であり、バプテスト派の教会に通うクリスチャンでもある鷹巣さんは、最初は一人でこの運動を始めた。「一緒に活動をしてほしい」「手伝ってほしい」と声を上げると、地元の「9条の会」を中心に各方面から支援者が集まり、実行委員会が結成。受賞発表の10日までに、紙による署名約35万、ネット署名約7万と、計42万を超える署名が集まった。