NPO法人アジア女性資料センターは6日、「JK産業」と呼ばれる仕事に従事する女子高生の救済のための活動を行っている、仁藤夢乃さんを招いてJK産業とストーカー問題に関する講演会を実施した。
「JK産業」とは、「女子高生」の頭文字を取って作った造語で、女子高生と何かをする商法のこと。秋葉原などでは「JKお散歩」や「JKリフレ(リフレクソロジー)」などと呼ばれる業態で、女子高生と一対一になるサービスを提供している。
売春や性犯罪に巻き込まれる危険が非常に高く、実際「裏オプション」と称してこのようなサービスを要求する客や、付きまといなども発生している。こうした産業に従事している女の子も、さまざまな理由で家庭や学校で居場所がなく、逃げるように繁華街に繰り出し、そこでスカウトされたという人が多い。近年、規制を厳しくしたり、摘発もされてきてはいるが問題の解決には至っていない。
仁藤さんは、こうした女性たちの救済を目的に活動している。若干24歳の彼女は自らの過去を振り返り、「自分も高校生のころ、『些細なことの積み重ね』で、同じようなバイトをしていた」と語る。女の子たちの救済活動と合わせて、この問題についての書籍『女子高生の裏社会』や、自らの経験をつづった『難民高校生』を出版したり、講演会での啓蒙活動など、現在精力的に活動している。
この日の講演では、特にストーカー被害との関連についてフォーカスを絞って話したが、「関係性の貧困」が問題の根本だと指摘する。仁藤さんもこの「脱法風俗」とも呼べる産業に従事する女性たちと向き合うことによって、「過去の私と同じように、彼女たちは学校でも家でも居場所がなくて、寂しさを埋めるために街に出た子たち」と語る。
離婚や家庭内暴力、ネグレクトなど、家に帰りたくてもそこには居場所がなく、学校でも誰に相談して良いか分からない。そうして街に出ても多くの大人は冷ややかな目線で彼女たちを見る。そんな彼女たちに声を掛けてくるのは性の対象として見てくる男たちや、性風俗の経営する立場の人たちだ。
彼らはあの手この手でそんな女の子に近づいてくる。しかも本来守る側の大人にとって目の届きづらいSNSや新たなアプリを使い、彼女たちの寂しさだったり、金銭や食事などのニーズを満たす。「そういう大人は本当に良く研究しています。そして彼女たちの未熟さに付け込んで、その産業の担い手として教育までしてしまうのです」と仁藤さんは言う。
そんな自身も経験した状況からの転機を、仁藤さんは阿蘇敏文牧師との出会いだと振り返る。阿蘇牧師については、「価値観だったり、『あれは禁止』とか何も押し付けられなかったんですよ。だから何となく居心地が良くて。むしろ一緒に話して考えて、一緒に悩んで、一緒に学んでくれる人でした」と話す。「一つの生命から、たくさんの命が生まれます。皆も同じように、たくさんの実を結ぶのです。何に人生を賭けるか、ゆっくり考えてください」と、田植えを通して教わったと自身のサイトでも紹介している。
最終的に阿蘇牧師とフィリピンに行ったとき、現地の売春の実態を見た経験が今の活動につながったという。仁藤さんは「阿蘇さんのように仕事としてではなく、人間として接することが重要ではないか」と指摘する。そのような活動を行政もしようとしていることを認めつつ、「健やか過ぎては効果は期待できない」とも言う。
「このような子どもたちは社会や大人によって傷つけられてきた。だから補導員とか“大人”が近づいてきただけで拒否反応を示す。一方、彼女たちをスカウトする側は積極的に関係性を築いて、その関係性を使って彼女たちを縛る。だから彼女らを救う側として、彼女たちが親近感を抱くようにすることが必要なんです」と語った。
講演中には仁藤さんと女子高生とのやり取りも例に挙げていたが、そのような女子高生たちにとって、仁藤さんは「お姉さん」として悩みを打ち明けられる存在なんだと感じた。一方、このJK産業に経営側として携わった男性へのインタビューの話もあり、この男性は「孤独な女の子に付け込むのは簡単。需要と供給の関係がある以上、この産業はなくならない」と話すという。
質疑応答の時間も持たれ、さまざまな意見・感想が出る中、「さまざまな意見は聞こえてくるけど、これは犯罪の合法化。適切な判断がしづらい子どもの立場に立つべきであるし、男性も『私欲は本能』などという言葉を信じて、切り捨てないでほしい」と結んで講演を終えた。
仁藤夢乃さんの活動の詳細はホームページで。