バイブル・アンド・アート美術展2014「平和を想う」(バイブル・アンド・アート・ミニストリーズ=B&A主催)が21日、目黒区美術館区民ギャラリー・スペースAで初日を迎えた。
B&Aは、クリスチャンによる美術活動を通して、神の存在、またイエス・キリストを証していくことを目的としたミニストリー。1995年から活動を始め、今では約170人のメンバーが在籍している。全国各地にいるメンバーに応募を呼び掛け、美術展を開催するのは年に一度。今回は48人のメンバーによる110点近い非常に多くの作品が集結した。
今年のテーマは「平和を想う」。来年の戦後70年、広島・長崎被爆70年を意識したテーマで、水彩画、油彩画、ペン画、日本画、写真、プリザーブドフラワー、彫刻、クレイアートなど、さまざまな技法を用いて、視覚的にテーマが表現された。この日は美術展オープンにあたり、メンバーがそれぞれの作品解説を行ったが、テーマが与えられたときに、「平和」について自分なりに考えを巡らし、イメージを膨らませたという声が多く聞かれた。
米カンザス州から美術展に合わせて来日した Chiyoko Myose さんは、新作のインスタレーションアート「平和への想い、次の世代へ」を展示。ボリュームのある作品を作ってほしいという要望を受け、展示室の三角コーナーを利用した立体アートを作り上げた。多民族の国に住んでいる Myose さんは、国家間の平和は個人同士の平和から始まると常々考えているという。
アートに使用した素材は、黄色い糸と柔軟剤シート。柔軟剤シートは、米国では一般的な、乾燥機に入れて使用する白い布。洋服の生地が柔らかくなり、良い香りが付く効果があり、静電気を防ぐ役割も果たす。人の心が柔らかくなる、キリストのかおりが広がる、人と人とが握手をするときに静電気が起きない、そのイメージから今回のアートが生まれた。
家の近くのランドリーに行き、「使用済みのシートをください」と言ってもらってきたものを集め、糸で縫い合わせた。人間関係をつなぐように、結んだり、縫い合わせたり、編んだりして、浮かび上がってきた形が花のようなのを見て、花粉のように糸を垂らすことにしたのだという。
花粉が、次の世代を生み出す大事なものであるように、平和も継承されていってほしい、そんな願いが込められている。「あなたがたは、自分に関する限り、すべての人と平和を保ちなさい」(ローマ12:18)と添えられた御言葉が、制作の過程や完成した作品に表れているのではないだろうか。
B&A代表の町田俊之氏は、この美術展が「教会のようだ」と語る。一つの神を見つめながら、個性が生かされた作品が溢れている。全員の作品をもって同じ神をあがめる姿は、まさにキリストの御身体である教会の姿を表しているようだ。
数年前に、B&Aのメンバーに加わった八角洋子さんは、10代のころから絵に親しみ、絵に関わる仕事を目指していた。だが、結婚を機に環境が変わり、子育てに追われる中で、筆を持つ機会が減り、気付けば「自分は絵が描けない」と思い込んでしまっていたという。
クリスチャンになった後も、絵を描くことはなかったが、B&A主催の「みことばを描くワークショップ」に導かれ、人生が変わった。作品の評価を意識するばかりに、一度は挫折を味わったアートが、神にささげることで大きな喜びに変わることを知った。
今では、絵を描いているとき、自分の手が神の手のように感じるときがあるという。絵を描いている時間が、神と自分の平和を感じる時であり、作品から発せられるメッセージを通じて、新しい平和が作り出される。まさに、「平和をつくる者は幸いです」だ。
町田氏は、「平和の伝え方にはさまざまな方法があるだろうが、美術家には美術家なりの主張がある。言葉は巧みでないにしても、行動力はないにしても、自分ができることで平和を発信することが使命ではないか。ここが新しいスタートです」と語った。「平和を想う」というテーマは、今年度と来年度の一貫したテーマとして掲げられている。この美術展の開催期間だけでなく、年間を通じて平和を思ってほしいという願いが込められており、美術展だけでなく、美術館などでの勉強会も企画されるという。
バイブル・アンド・アート美術展2014「平和を想う」は26日(日)まで開催。午前10時から午後6時まで。ただし、最終日の26日は午前10時から午後4時まで。問い合わせは、バイブル・アンド・アート・センター(048・837・8583)。