クリスチャンによる美術活動を通して福音を伝えるバイブル・アンド・アートミニストリーズ(B&A)は今年創立10周年を迎えた。代表の町田俊之牧師(52)に、B&Aのこれまでの歩みと今後のビジョンを聞いた。
「神と美術、この二つは果たして相容れないものだろうか」。町田師は、自分が持っていた「神と美術との関係」についての疑問をきっかけにミニストリーの働きを始めた。「神に献身するためには、今まで自分がしてきた美術を捨てなければいけないのか」、いつしか町田師の周りには、同じ悩みを持つ多くの人々が集まっていた。
「美術と福音は決して比べるべきものではない」という町田師。美術は美を創りだす。美を創り出すのは、この全地のすべてを創造された神だ。神が創られた美を否定する必要はない。その美を創作する美術もまた同じだ。
しかし、美術によって創りだされる美は「目に見えるもの」である一方、神は「目に見えないもの」。この2つは一見相容れないもののようにも思われる。町田師は「美術は神を褒め称えるための手段であって、決してそれ自体が崇められる対象ではない」と強調する。美術はキリストの文化に融合されるとき、初めて本来あるべき姿を回復するという。
町田師は、「福音」と「文化」の関係を人間の「骨」と「肉」にたとえている。骨だけの人間が町に出かけたとしよう。町を行きかう人々はみな怖がって彼とコミュニケーションをとることができない。しかし、肉があれば人々は彼と挨拶し、互いに近づくことが容易になる。「福音を強調するとき、教会は本来欠けてはいけないものまでも削ぎ落としているのかもしれない。教会が文化に対する認識をより高めれば、新しい大きな宣教の扉が開かれるのでは」と町田師は語る。
バイブル・アンド・アートミニストリーの名称には、バイブル(神)とアート(美術)を「つなげる」という意味合いが込められている。イエスが目に見えない神の性質と目に見える人としての性質を持つように、目に見えない神と目に見える美術が一つになるとき、素晴らしい神の栄光があらわされるのではないか。美術は神にとって一つの領域に過ぎない。美術とはキリストという大きな体を構成する一つの色。美術が神と一つになるとき、本来あるべき真の価値を回復する。
B&Aは、グループ展など、芸術のタラント(才能)を持った宣教を志す人々に活動の場を提供している。会員のノンクリスチャンがB&Aをきっかけとして教会に関心を持つようになり、伝道の実りもあった。「神と芸術は対立しない。芸術はキリストの体の一部だということをもっと多くの人に知ってもらいたい」とB&Aの奉仕への熱意を示した。