詩画作家・星野富弘さんの世界を音楽で表現しようと6日、渋谷の東京山手教会に若手クリスチャンアーティストが集結。夢の共演を行った。
出演したのは、明るい感じのハーモニーが心地よい女性2人組ユニット Olive、温かな笑顔と人柄を表すような温もりのある歌声が魅力的な大宮香織さん、聴いた者を虜にする力強い歌声と優しい音を持つ TAKEO さん、透き通るような癒し系の歌声と表現豊かなピアノの姉弟ユニット Rainbow Music Japan、あらゆる年代層から絶大な人気を誇る Samuelle さん、クリスチャンアーティストの代表格である Migiwa さんの6組。主催したのは、富弘美術館を囲む会東京・神奈川支部。「富弘さんの作品は、クリスチャン・ノンクリスチャンの方々の枠を超えて、多くの方々に支持されている。そこに音楽というエッセンスを加えて、多くの方々に伝え、福音を広めるお手伝いができればと思いました」と同支部の大嶋英知さんは語る。
今回のコンサート「Color of Tomihiro Hoshino」は、5月に富弘美術館で行われたイベントにさらなる演出やアレンジを加えて行われた。集まった観客は約500人。会場となった教会はほぼ満席となった。コンサートは無料だったが、事前に用意されたチケットは即配布終了となり、当日席を求める観客の姿も見られた。
群馬県みどり市にある富弘美術館は1991年の開館以来、640万人が訪れている。この日挨拶に訪れた聖生清重館長は、「富弘美術館の魅力は、入口に立った自分と、星野富弘の作品を見た後、出口に立った自分とは別人のようになっていることでないか」と話した。
また、コンサートに寄せて星野富弘さん自身からのメッセージとして、「私の絵の代わりに音楽で星野富弘の世界を味わっていただく良い機会。私の詩は多くの方々が曲をつけてくださっているが、このように若手アーティストたちによってアレンジされ、コンサートを開くのは初めてではないか。今日は、星野富弘の詩をイヤというほど聞くかもしれないが、聞きすぎても死ぬようなことはないのでご安心を」とユーモアを交えて紹介した。
最初にステージに上がったのは、Olive の2人。星野富弘さんの「疲れたときは」の詩に曲を乗せた。3年前の詩画展で出合ったこの詩に心を打たれ、忘れないようにしたいと家の中で、曲をつけ、鼻歌のようにして歌っていたというOlive の小柳永子さん。「まさか、こんなに大勢の方の前で披露する日が来るなんて」と緊張した様子で話した。2人の息子がいる小柳さんは、育児や家事、自身の音楽活動にと多忙な毎日を送っている。年間20本以上のチャペルコンサートを開いているという Olive は、「多くの方々に聖書の言葉に触れてもらいたい。神様からの良い知らせを伝えたい。音楽でそれを表現できれば」と話す。この日のコンサートの感想を聞くと、「教会単位のコンサートよりも、たくさんの方々が入っていたことと、多くのアーティスと同じ舞台ということで、とても緊張しましたが楽しかったですね」と笑顔で話した。
次に登場した TAKEO さんは、「富弘さんの詩画との出合いは、いつだったか覚えがないほど、カレンダーなどをはじめ、いつも僕の側にあった」という。この日披露した「小さな花」は、自分の祈りの言葉と重なった詩。「思い悩んだとき、誰に手を伸ばしていいか分からないとき、どんなに失敗しても、分からなくても、その大きな温もりで包んでくださる方がいらっしゃる」と感じ、曲をつけて歌にした。祈りを込めて歌う力強い歌声に会場からは大きな拍手が起こった。
大宮香織さんは仙台出身。カレンダーから知ったという「そこになくても」「悲しみの意味」の2曲を披露。東日本大震災後、「音楽なんて何の役にも立たないのではないか」と落ち込んだ時期もあった。しかし、現在もなお多くの避難所や仮設住宅を訪問。被災地に祈りと思いを向け、天からの慰めと癒しがあるようにと歌声を届け続けている。「人生には決して無駄なものなどない」と観客に力強いメッセージを送った。
Rainbow Music Japan の2人は、「逢いたい」「ニセアカシア」の2曲を歌った。「私たちは、一人ひとり目的をもって生かされている」と祈りを込めて作った曲を披露した。また、コンサート後のインタビューで「今日は、たくさんのアーティストと共演できて、とても楽しかった。私たち一人ひとりが神様を見上げて、今回は星野富弘さんという一つのぶれない軸があったから、メッセージがより明確だったと思う。アーティスト一人ひとりのアレンジも興味深く、面白かったですね」と、姉の佐々木静さんは話した。
さまざまな年齢層のファンも多い韓国出身、日本育ちの Samuelle さんは、星野富弘さんの2つの詩を一つの楽曲にして歌った。「富弘さんの前でこの曲を歌わせていただいたときは、とても緊張しました。2つの詩を一つの曲に入れてしまったこと。自分なりのアレンジを加えていることなどを、富弘さんはどうお感じになるのかと不安でしたが、とても気に入ってくださったので安心しました」とエピソードを付け加えた。コンサート後のサイン会では、多くのファンが殺到し、サインを求めた。
最後に登場したのは、クリスチャンアーティストの大御所とも言うべき Migiwa さん。コンサートで全国各地を訪れ、多くのファンに親しまれている。今回の曲は初めて歌う曲でもあり、非常に緊張していると冒頭に話した。ホームコンサートで、星野富弘さんの自宅を訪れたときには、短い詩に曲をつけて歌ったので間違えてしまった。富弘さんが「2番を僕が作ってあげるよ」と言ってくださった。「すぐに2番を作って、送ってくださったんですよ。今日はそれも間違えないように歌わなきゃ」と笑顔で歌い始めた。
6組のアーティストが歌い終わると、会場からは「アンコール」の声が。その声に応えて、6組全員のアーティストがステージに登り、一曲を全員で歌い上げた。
主催者の一人である大嶋英知さんは、「今回は、このコンサートのためにアーティストたちは曲作りから始めました。それから、こちらはさまざまな準備に追われ、忙しい日々でしたが、クリスチャンの方はもちろん、聖書を知らない方々にも良いメッセージが伝えられたのではないか」と、その後の感想を話した。
星野富弘さんの世界は、目で見ても、音で聴いても、味わい深い。心にすっと入った優しい風を心地よく感じながら、大都会の雑踏の中を歩き、観客たちは家路についた。