バグダッドの聖公会の創立会員の息子(5)が、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」(※1)によってキリスト教徒の町カラコシュが攻撃された間に、半分に切り裂かれた。
同日に行われたインタビューで、感情的なアンデレ・ホワイト参事司祭はACNSに対し、彼は数年前にその男の子に洗礼を授けたと語るとともに、その子の両親は彼にならってその子にアンデレと名付けたと述べた。
「私はもう泣きそうです。だって私の部屋にいたばかりのある人の幼い子が半分に切り裂かれてしまったのですから」と彼は語った。「私はバグダッド(※2)にある私の教会で彼の子に洗礼を授けました。この幼い子は、彼らが私にならって名付けたのですが、彼の名前はアンデレでした」
イラクの首都にある聖ジョージ聖公会にならってアンデレの兄弟がジョージと名付けられたことは、その家族がそこにある教会と強い絆を持っていたことを示している。この男の子の父親は1998年にこの教会の創立会員となり、その時にこの参事司祭が初めてバグダッドにやってきた。ホワイト参事司祭は、「この男性は、北部へ立ち去って家族と一緒になる前は、この聖公会の管理人でした」と付け加えた。
北部へ立ち去ることでそのイラク人のキリスト教徒の家族にとってより安全になったはずなのに、「イスラム国」はそこが確実にテロの場所となるようにした。「このカラコシュという町はキリスト教徒の村なので、彼らはそこにいる誰もが自分たちの標的の集団の一部だと知っていたのです」とホワイト参事司祭は語った。「彼ら(イスラム国)はこの町全体を攻撃しました。彼らはそこを爆撃し、人々を撃ったのです」
クルド人の軍隊が撤退した後、この「イスラム国」という集団はカラコシュを水曜日から木曜日にかけて一夜にして占領した。
この男の子の家族は、他の多くの街の人たちと一緒に、今はイラク北部の都市アルビールに逃げた。だが、報道が示すところでは、ここはイスラム国の次の目的地かもしれないという。
救援活動の前線に立つ聖公会員
イスラム国によってイラクの諸地域が乱暴に乗っ取られることにより、攻囲されたこの国には国連が「人道上の破局」となるだろうと述べたことが引き起こされる恐れが出ている。
アンデレ・ホワイト参事司祭は、モスルや二ネベから北部へと逃れたキリスト教徒たちや、イスラム国によって標的とされているその他の多くの少数派集団に多くの支援を行おうと懸命な働きが行われてきているという。
「聖公会員はこの状況の中で助けをもたらす文字通りの前線にいて、他には誰もいません」と彼は語り、同教会は、海外にいる支援者からの献金のおかげで、とても必要とされている食べ物や水、宿泊施設やその他の救援物資を提供している。同教会の活動はイスラム教徒であるサラ・アハメド博士によって指導されている。
「私たちが必要なものは二つ――祈りとお金です。それら二つがあれば私たちは何かができます。それら二つがなければ私たちには何もできません」
寄付をしたい人たちはこちらで寄付することができる。祈りについて、ホワイト参事司祭はこう語った。「私がいつも言うのは、私には3つのPがあるということです。それは、Protection(保護)、Provision(供給)、そしてPerseverance(忍耐)です。私たちには保護が必要であり、私たちにはそれらの人たちに供給をする必要があり、そして私たちは進み続ける必要があるのです」
フェイスブックやツイッターのソーシャルメディアにある投稿から明らかなのは、世界中の聖公会員がこの状況のために祈っているということだ。ソーシャルメディアのアバターを、ISISがキリスト教徒の家庭を確認するために使っている、ナザレ人を意味する「N」にあたるアラビア語の表象へと変えることによって、多くの人たちがイラクで迫害されているキリスト教徒たちのための支援も示した。
声を大にする指導者たち
ここ数日、エジプトやウェールズ、ブラジル、南アフリカなどの聖公会の指導者たちは、イラクで展開している状況に落胆を表した。
カンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビーは、フィリピンからパプアニューギニアへ旅をする少し前に、8日付でイラクの状況に関する下記の声明文を発表した。
「イラクのおぞましい出来事は、まさに私たちの注意と悲しみを再び呼んでいる。キリスト教徒や他の宗教的少数者は殺されてひどい苦しみに直面している」
「私たちがイラクで目の当たりにしていることは、世界人権宣言の第18条に定められた信教の自由に対する人々の権利を残虐にも侵害するものである。極めて重要なのは、援助の取り組みが支援を受けており、立ち退きを強いられた人たちが安全を見出すことができているということである。私が思うに、フランスのように、英国も歴史を通じてずっとそうであったように、難民に対して門戸を開くべきである」
「将来訴追を行うことができるように、国際社会はイラク北部で行われている人権侵害を文書に記録しなければならない。国際社会は、これらの残虐行為が行われるのを許してきた刑罰免除の文化に挑戦することが重要かつ必要である」
「世界の注意がイラクの人たちの苦境に向けられる中で、私たちはこれが、キリスト教徒や他の少数者たちが自らの信仰のために殺され迫害されているという、世界中における悪のパターンの一部であることを忘れてはならない。ほんの今週に私はナイジェリア北部にいる友人から、キリスト教徒たちがイエス・キリストに対する自らの信仰ゆえに殺された、ある村に対するゾッとするような攻撃についてのEメールを受け取ったばかりである。このようなおぞましい話が、シリアや南スーダン、そして中央アフリカ共和国を含めて、世界中の国々で気の滅入るほどありふれるようになってしまった。
「私たちは世界中の平和と正義と安全を求めて神に向かって叫び続けなければならない。このようにイラクにおけるゾッとするような扱いは、いまとりわけ私の祈りのうちにある」
イングランドとウェールズで8月9日(日)をイラクのキリスト教徒たちのための祈りの日に定めたローマ・カトリックを含め、他のキリスト教指導者たちもまたイラクの状況について声を上げてきた。シリア正教会総主教も、総主教たちの緊急会議の後、きのう国連に書簡を送り、国連安全保障理事会に『この大虐殺を止めるという自らの責任を果たす』よう求めた」