【ワシントン】米聖書神学者のウェイン・グルデム氏は、米首都ワシントンで開催された米家族研究評議会(FRC)で、自由市場が世界貧困を解決する唯一の道と伝えた。4日、米クリスチャンポスト紙(CP)が報じた。
米FRC発刊の同氏新著「国々の貧困-持続可能な解決法」発表会でグルデム氏は、「貧困国は自国による繁栄を通してのみ豊かになることができる。自由市場は経済問題の答えであるだけでなく、聖書の倫理観にも即している。自国が繁栄することによって、国家は貧困を免れることができる」と指摘した。
米アリゾナ州フェニックス神学校で神学・聖書学教授を務めるグルデム氏は、同氏の著書「組織神学-聖書的教義への導入」などで知られている。
グルデム氏は、「新著は個人的にガラテヤ書2章10節に動機付けられている。パウロはこの箇所で貧しい人たちをいつも顧みるべきであり、そのことを大いに努めてきたことを伝えている」と説明した。
一方、貧困国の政策指導者らについては、豊かになろうとする前に自国の貧困と繁栄の原因について良く調べるべきだと警告した。
グルデム氏は、「一人当たりの国民所得を増加させる唯一の方法は、商品とサービスの総生産量を増加させ、すべての人の富を増加させるようにすることだ。もし貧困国にあって影響力のある指導者となりたいのであれば、焦点は一人あたりの国民所得を増やすことになければならない。自国の商品とサービスの総生産量を増加させなければならない」と伝えた。
グルデム氏は、貧困国が商品とサービスの総生産量を増加させるための諸要素の背景には、「経済システム」「政府」「文化的価値観と信条」という3つの鍵となる分野が存在すると指摘した。
経済システムに関してグルデム氏は、経済の自由度が高められることが必要だと伝えた。
また教皇フランシスコがアルゼンチンで「資本主義の暴走を生む金銭崇拝」との書簡を発表したことについては、「アルゼンチンに潜む市場のマイナス要因が教皇の見解の原因となっている」とし、「教皇は貧困の構造的要因について正しく模索している。だが、機会が与えられないという貧困の原因よりも、不平等に重きを置いた見解を伝えている」と指摘した。
また、国家が繁栄するには、経済繁栄の契機を模索すると同時に、政府権限の制限と国民の平等が必要だと指摘した。
グルデム氏は、「旧約聖書でダビデ王がバテシェバとの過ちを犯した際、神は法を犯したダビデ王を処罰した。法の下での平等の原則は、これによって聖書的な見解であることがわかる」とし、「各国政府はローマ書13章4節の権能を発揮するために権限に制限がなければならない」「政府は国民に益を与えるための、神のしもべであるべき」と伝えた。
最後のポイントとしてグルデム氏は、文化的背景と価値観について、「経済発展のもっとも重要な要素となる。ある社会について、真実で盗みをせず、どれだけ誠実に仕事をするかなどとということは、数値で見ることはできない」と指摘した。
また、各国が繁栄するためには聖書の価値観を保護する必要があるとし、「神はイスラエル国家の繁栄を生産的な働きをもって祝福されている。イスラエルの民に天から与えられたマナは、天からの『対外援助』といえるだろう。対外支援は、個人的レベルで貧困を回復することにおいては緊急性を要するものであるが、対外支援のみに依存するならば、貧困の根本的な問題を解決できない。債務免除についても、『融資』の名によってカモフラージュされた対外支援であって、同じことが言える。大量の天然資源があったとしても内戦を引き起こすだけであり、資源が豊富な貧困国がある一方、資源が乏しい先進国も存在する。紙幣の増刷(金融緩和策)は機能しない。なぜならば、紙幣は食べることができず、紙幣によって人々が保護されるわけではないからだ」と指摘した。
金融市場においては、投資家らの間で各国の金融緩和策がいつまで続くかに注目が集まっているものの、根本的な経済問題の解決については、先行き不透明感が高まっている。
さらにグルデム氏は、「富の再分配や、過去に自国を植民地支配した国を批判することは、実際的な貧困解決につながらない」と指摘した。
貧困問題の解決については、「主な点は、商品とサービスの総生産量を増加させることで、一人当たりの国民所得をいかに増やすかということにある。これこそが、先進国が豊かになった理由であり、聖書も奨励する方法だ」と結論づけた。