アッシジでの世界諸宗教による集いは「世界平和と正義のための対話と祈り、これまでの振り返りを行う日」として1986年10月27日に前教皇ヨハネ・パウロ2世の呼びかけによって始められた。この「アッシジの精神」が日本の仏教徒にも引き継がれ、京都比叡山宗教サミット(世界宗教者平和の祈りの集い)として開催され、日本宗教史上特筆すべき集いが毎年比叡山で開催されている。
アモス氏は「アッシジの集いは平和へのはかり知れない潜在力を秘めています。諸宗教間の平和なくして世界平和は成り立ちません。宗教者として共通の懸念事項の解決に向けて共に歩む努力をしていくことが平和実現のために必要不可欠です。これがアッシジの精神でもあります」と述べている。
アモス氏は今秋よりWCCに加盟し、異宗教間対話・協力プログラムエグゼクティブに任命された。同氏は英ケンブリッジ大学とエルサレムのEBAFで神学を専攻した他、エルサレムとレバノンに10年以上滞在し、異宗教間問題や神学教育に深く関与してきた。聖書研究や異宗教間の関係構築、霊性に関する著書も数冊出版している。レバノン首都ベイルートの聖公会司祭アラン・アモス氏と結婚後、1980年代は中東教会協議会や同地域の神学校のために献身的な働きを行ってきた。ベイルートに滞在しながら、レバノン内戦やイスラエルのレバノン侵攻など困難な社会状況の中での双方の対話の道を模索してきた。
アモス氏はWCCでの自身の仕事の優先事項の一つとして中東諸教会の対話に深く関与していくことを挙げており、「中東域にある諸教会において、他宗教者との対話を避けて通るわけにはいきません。キリスト教徒が新約聖書の文脈においてどのようにユダヤ教徒と関わって行くかと言う問題にも直面しています。エルサレムというユダヤ教徒、キリスト教徒そしてイスラム教徒にとっても聖地である場所において、ユダヤ教徒が信じる旧約聖書が最近のイスラエル政府の行動を正当化するのにどのように用いられてきたかについても無視することはできません」と述べている。
異宗教間の対話の重要性が高まる中、キリスト者が自身の信仰について改めてしっかりと理解することが重要であるという。アモス氏は聖地エルサレムにおける異宗教間の対話促進が重要であると見なしており、キリスト教徒としての伝統を理解するにも、エルサレムの地での異宗教間対話を避けて通ることはできないと見なしている。
アモス氏は「異宗教間の対話によって改めて私たちキリスト教徒がどういう存在であるかを発見することができます。ですからWCCのキリスト者自己理解プログラムは異宗教間の枠組みで成されることが重要です。ユダヤ教徒、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒および仏教徒とともに存在しているキリスト教徒として自身の存在を認識し、異宗教間の対話を促進していこうとするモチベーションを持つことが必要です」と述べている。
アモス氏はさらに各国における宗教活動の自由、人権問題、宗教少数派を保護する活動において異宗教間の協力をさらに強化していきたいとの抱負を述べている。またキリスト教内のエキュメニカル運動や神学対話においてもさらなる発展がなされることを願っており、「エキュメニカル運動による対話促進に深く関与していきたいと思います。キリスト教諸宗派における対話には複雑な要素が関与しています。WCCでの働きの中でエキュメニカル運動における対話促進はひとつの挑戦でもあります」と述べている。