13日、サウジアラビアサウド・ファイサル外相、オーストリアのマイケル・スピンデルガー外相、およびスペインのトリニダード・ヒメネス外相は3カ国間によるオーストリア首都ウィーンにおいて異宗教間交流センターを設立することに関して、3カ国が協力していく方針を表明した契約書に調印を行った。
3カ国間による異宗教間交流センターは「宗教間文化間の対話のためのアブドラ・ビン・アブドゥルアズィーズ国王国際センター」と呼ばれるもので、その建設費の大部分はサウジ政府によって賄われているという。同センターは2012年中旬にもオープンする見通しで、アブドラ国王はウィーンを選んだ理由として、「同都市ではすでにたくさんの国際会合を開催している」ことを挙げた。
海外報道によると、同センターは12の異宗教・異文化の団体代表者らから構成されており、その中にスンニ派およびシーア派イスラム教徒の代表者、カトリック、聖公会、正教会キリスト教徒の代表者、仏教徒、ヒンドゥー教徒およびユダヤ教徒の代表者も含まれているという。他にも多様な信仰をもつ100名の団体代表者、各大学や市民社会の代表者も加わる予定であるという。
ドイツメディアの「ドイチェ・ヴェレ」によると、調印式の際にサウジアラビアのサウド・ファイサル外相は「世界平和は世界主要宗教間の平和なくしては成り立たないことは明らかです」と述べたという。「ドイチェ・ヴェレ」ではさらにオーストリアのスピンデルガー外相は、「この組織はいかなるひとつの信仰をも他の信仰の上に立つことがなく、このセンターの統治に対する政治的作用は働かない」と述べたという。
今回調印した3国の他、諸外国の宗教者、文化人らが同組織に加盟することができるという。同施設の建設には、数百万ドルがかかっているという。アブドラ国王は「いかなる政治的関与もなされない独立したセンターとしての基金を設立することが我々の目的である」と述べている。
「ドイチェ・ヴェレ」によるとアブドラ国王は2007年にローマ教皇ベネディクト16世と会見した後にこの施設を設立するアイデアが思い浮かんだという。アブドラ国宝はキリスト教徒とイスラム教徒が世界平和のための共通の土壌を見出すように呼びかけるための会合を行ってきた。2007年のローマ教皇との会合以外にも2008年、2009年の3回にわたってメッカ、マドリッド、ウィーンにおいて異宗教指導者らとの会合を行い、その結果今回の施設の設立という最終計画に至ったという。
一方オーストラリア国内では、地域メディアや政治家、穏健派イスラム教徒らが、同施設にサウジ国王が投資することに何らかの隠された動機があるのではないかとの懸念を示している。というのもサウジアラビア政府はシャリア法の統治下にあるからであるという。同国の国民の100パーセントがイスラム教徒で、同国のシャリア法により改宗は許されない。米国務省ではサウジアラビアを「宗教の自由が認められず、同国法の下に保護もされていない国」であると報告している。
サウド・ファイサル外相は、13日の記者会見で「サウジアラビアには宗教の自由がないのではないか」と問われたところ、「宗教センターの設立がサウジアラビアにとってより寛容で他宗教を認める国となることに影響をもたらす可能性がある」と答えたという。
また同施設の各宗教団体の運営権限について、ファイサル外相は「いかなる宗教にあっても過激派の少数派が他宗教や他の文化を持つ人たちに対して非寛容や排他主義、差別、敵意をもつような行動は受け入れられない」と警告している。
AP通信によると、同宗教センターでは「全ての人の人権と基本的な自由が認められており、人種・性別・言語・宗教による差別がなされず、良心と宗教、思想について自由に表現できる権利が与えられている」という。
米クリスチャンポストによると、一部キリスト者からは、アブドラ国王による同施設の建設は、イエス・キリストの再臨の前に生じるといわれる「ひとつの世界宗教」が生じる預言の成就ではないかとも言われている。ヨハネの黙示録の預言が実現していく世界を描いた小説「レフトビハインド」著者のティム・ラヘイ氏およびジェリー・ジェンキンズ氏は黙示録13章、17章および18章から「終末を見分ける3つの象徴」として「一つの世界政府、一つのグローバル通貨、および一つの世界宗教」が生じることを主張している。
アブドラ国王による異宗教センターは公式的に3カ国間の調印の下に設立され、今後同施設でどのような信仰を背景に持つ代表者らが活動していくのか、また同宗教センターに福音主義キリスト教徒がどのように関与していくかが注目されている。
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