社会的弱者とその人々の直面する厳しい差別の認識を広めて権利確立を目指す国際人権NGO「反差別国際運動日本委員会」(IMADR-JC)は今月、日本への移住女性の差別問題に取り組む団体「カラカサン−移住女性のためのエンパワメントセンター」との共同編集で、著書『移住女性が切り拓くエンパワメントの道―DVを受けたフィリピン女性が語る』(1200円、解放出版社刊)を刊行した。
本書では、80年代から90年代にかけて来日し、ドメスティック・バイオレンス(DV)を経験したフィリピン人女性5人が、それぞれの経験を振り返り、分かち合う作業を通して、自分の尊厳を回復していった過程を語っている。個人的な経験にとどまらず、背景に移住者や女性を差別し排除する日本社会の構造があるとの認識のもと、人間関係、コミュニティ、そして社会全体を、癒しと励ましをもたらすものへと変革するよう提言している。
この企画は、IMADRの共催連続講座「グローバル化の中の人身売買」のなかで、カラカサンのメンバーが講師となったことがきっかけで始まった。
IMADR-JCは、「被差別当事者のエンパワメント(「たちあがり」)と連帯(「つながり」)を重視して活動してきたIMADRが、移住女性による、移住女性のためのグループであるカラカサンと協力して本書を刊行できたこと自体が、本書が展望する社会変革への第一歩となりうるものと自負しております」と語った。