バチカンは最近遺伝子組み換え(GM)食品が世界飢饉と栄養不足問題を解決するとして、これまで遺伝子組み換え食品に反対してきた人々を困惑させている、と地元紙が5日報道した。
今回にいたるまでバチカンは、ヨーロッパ連合(EU)とアメリカのGM食品開発事業に中立的立場を取ってきた。
「正義と平和のための教皇委員会」の最高責任者であるレナト・マルティノ大主教は、バチカンはバイオテクノロジーに関する公式的な報告書を来月公開するが、今回の発言は遺伝子操作全般に関しての見解としてよいのではないかと語った。
またEU農業部長官らのGM食品に関する報告会も近日計画されており、今回の内容と関連して議論が進むと思われる。
マルティノ大主教は、教皇が農業技術発展に特別な関心を持っていると現実的に毎日2万4千名が飢えで命を失っていると指摘した。
去年までUN駐在員として派遣されていたマルティノ大主教は「アメリカでの16年間の生活の中、私は私に与えられた食べ物を何一つ拒まずに食べた。そこにはGM食品も含まれているだろう。しかしGM食品が私の健康に害を与えたことは一度も無かったと信じている。GM食品に関する一連の論争は、科学的というよりは政治的特色が強い」と語った。
バチカン関係者は「『創世記』では人間が自然を統括するべきことを明確に語っている。神様は人間に“自然を再び治めて全てを従わせなさい”と仰っている」と語った。
マルティノ大主教は、バチカンの教皇は科学調査顧問らからの報告を受け、遺伝子組み換え食品に対して前向きな姿勢を持つようになったと明かす。バチカン教皇は日夜飢えて死んでいく数千万の人々の救済策ならどのようなことも辞さないほどの熱意があると、大主教は付け加えた。飢餓からの解放は人間の基本的人権の一つとすべきで、バチカンはこれにより、人間が生まれてから死ぬまで享受しなければならない権利が保障されるために全力を尽くす立場は変わらないと語った。
バチカンの関係者たちは、西洋では遺伝子組み換え食品が世界的飢饉にどれほどの効果があるかについて研究・検討しようとせずただ反発するばかりで建設的ではないとした。都市大学教会法学教授は「お腹がいっぱいの人はGM食品を拒否する傾向にある」と皮肉った。
イタリア科学誌サペレの編集長カルロ・ベルナ・ルデ−ニ氏は「EU連合の傘下にあるイタリアであるとしても、教皇の見解は尊重すべきである」とした。
しかしイタリア農林省前長官であるあるアルポンソス・カニオペコラ氏はバチカンの主張に対して不満を述べ、「教会は教会権威をかざすことで米国をはじめとする多国籍企業らの“詐牛s為”を支持している」と責めた。同氏は米国ジョージ.W.ブッシュ大統領に対して批判を述べ、ブッシュ大統領が教皇庁に圧力をかけたのではないかと疑いの念を明かし、今回の問題が国家間の経済的・政治的問題につながっているのではないかと懸念を述べた。