日本宣教における「教会と地域福祉」の重要性と日韓教会の宣教協力、その具体例について話し合う「日韓・韓日地域福祉宣教セミナー」が5日、東京都新宿区のウェスレアン・ホーリネス淀橋教会で開催され、河幹夫氏(内閣官房内閣審議官、日本同盟基督教団和泉福音教会員)、尹基(ユン・キ)氏(社会福祉法人こころの家族理事長)、泉田昭牧師(いずた・あきら、同法人キングス・ガーデン理事長)、峯野龍弘牧師(セミナー実行委員長)らは「われわれクリスチャンが身を差し出し、イエス・キリストの愛のわざと全人的な癒やしを人々に施す責任がある」(峯野師)と、参加者に呼びかけた。
高齢化問題が深刻となっている日本と韓国で、地域社会に神様の愛を伝える「地域福祉宣教」を知り、実践を呼びかけようと、日韓キリスト教の代表者らが「高齢化社会と日韓宣教協力の新時代」をテーマに開いた。
基調講演で河氏は、明治時代にキリスト教指導者が開拓した日本の福祉事業が制度化されて税金を投入できるようになった代償として、法律上の「平等」という観点から信仰や宗教を扱えないという課題が戦後続いてきたと語った。河氏は「食べること、風呂に入ること、トイレに行くことを『福祉』としてきた。税金を投入する以上、(福祉事業に)いのちを吹き込むことに制限が生じた」と指摘したうえで、詰めかけた参加者に対し「介護保険制度で介護利用者が保険を背負い、サービスを市場の商品として選べるようになった結果、サービス提供者も信仰を表現できるようになった」と説明した。
そのうえで「商品といっても、福祉は冷凍も空輸もできない、隣にいる人だけができること。制度上できないからといって見殺しにすることはできない。キリスト教会とキリスト者は、人々を新しく繋げるものとして地域福祉を考え実践していってほしい」と訴えた。
また、尹氏は神戸市長田区に建つ特別養護老人ホーム「故郷の家・神戸」の設立背景を説明した。1987年5月下旬、在日韓国人の老人の孤独死を朝日新聞が報じた。韓国で孤児院を設立した尹致浩氏を父に持つ尹基氏は、日本人の母が韓国で死の間際に『梅干しが食べたい』と言ったことを思い出し、在日韓国・朝鮮人のために韓国文化を取り入れてキムチを食べる老人ホームの建設を決意した。政界、財界、市民らから多大な協力が寄せられ、89年、堺市で「故郷の家」が竣工。その後、94年には生野区にデイサービスセンター、そして01年に「故郷の家・神戸」が完成した。
尹氏は、教会を拠点とした社会福祉の新しい取り組みの例を説明した。尹氏は、社会福祉センターの設立に必要な手続きや財源確保の事例を紹介し、「教会の建設を予定していれば、敷地を予定より広く確保し、地域住民に生涯教育、デイケア、カウンセリングなどのサービスを提供してほしい」と力強く訴えたうえで、宣教活動の拠点としての福祉施設を広めていこうと呼びかけた。
また、全国40カ所に介護支援センターや障害者向け施設などを持つ社会福祉法人日本キングス・ガーデン理事長、泉田牧師があいさつし、「主イエスがなさったように、人生の大先輩にお仕えしたい。(施設内で)多くの人が救われている」と社会福祉宣教の成果を報告した。
会場には都内を中心にキリスト教会の指導者らが60人以上出席。懇談会では、具志堅聖牧師(日本福音同盟総主事)、中島秀一牧師(日本イエスキリスト教団荻窪栄光教会)、講演会の開会礼拝でメッセージを取り次いだ韓国の朴鍾淳牧師(韓国基督教総連合会会長、韓国社会福祉法人共生福祉財団理事長)らがあいさつした。