神奈川近代文学館(横浜市中区)は4月23日から6月5日まで、クリスチャン作家・遠藤周作の文学展「没後15年 遠藤周作展―21世紀の生命のために―」を開催する。
政治と結び付き、本来の役割を見失った宗教の対立により、多くの生命が犠牲となっている今日の世界。同展では没後15年のこの機会に、遠藤が混迷する21世紀の人々のため、時代を超えて投げ掛けるメッセージの意味を改めて問う。
遠藤は1955年、『白い人』で芥川賞を受賞。『海と毒薬』などの作品で、罪や神といった存在に無感覚な日本人の意識を鋭くえぐる一方、クリスチャンとして、日本人が違和感なく心を委ねることのできる神の姿を生涯追い求めた。66年、キリシタン禁制下の長崎を舞台にした『沈黙』を発表。沈黙の中で最後まで人間の嘆きに寄り添い、苦しみをともにする「人生の同伴者」としてのキリストの姿を示した。その後、同様のテーマをより親しみやすい作風で展開し、多くの読者を獲得した。
同展では、遠藤の人生と作品を幼年時代から晩年まで、▽プロローグ「『沈黙』―誤読された代表作」▽第1部「母なるもの」▽第2部「西洋の神と文学」▽第3部「生命の河へ―遠藤文学の展開」▽エピローグ「『深い河』の世界―宗教多元主義と現代」の順に展示する。
入場料は大人600円、20歳未満及び学生・65歳以上300円、高校生100円、中学生以下無料。月曜休館(5月2日除く)。問い合わせは、同館(財団法人神奈川文学振興会)総務課企画普及班(電話:045・622・6666)へ。
同展開催に合わせて、下記の関連行事も開催される。
■春のカルチャーイベント―朗読とトーク「遠藤周作『侍』を読む」
日時:4月7日(日)午後1時半開場、2時開演
出演:石坂浩二(俳優)、加藤宗哉(作家)
会場:はまぎんホールヴィアマーレ(横浜市西区みなとみらい)
料金:1500円
■講演会「遠藤周作さんと私」
日時:4月29日(金・祝)午後1時半開場、2時開演
出演:加賀乙彦(作家)
会場:神奈川近代文学館展示館2階ホール
料金:1000円
■シンポジウム「遠藤周作を21世紀に読む」
日時:5月5日木・祝)午後1時開場、1時半開演
出演:富岡幸一郎(作家)、兼子盾夫(横浜女子短期大学教授)、笛木美佳(昭和女子大学准教授)
会場:神奈川近代文学館展示館2階ホール
料金:800円
■文芸映画を観る会「私が棄てた女」(予定)
日時:5月7、8日(土、日)午後1時開場、1時半上映
会場:神奈川近代文学館展示館2階ホール
料金:前売り600円、当日700円
問い合わせ:文芸映画を観る会(電話:090・8174・7791)
■講座「遠藤周作の、西欧世界との遭遇、キリスト教との遭遇」
日時:5月14日(土)午後1時半開場、2時開演
出演:森一弘(カトリック東京大司教区名誉司教)
会場:神奈川近代文学館展示館2階ホール
料金:800円
■講談とトーク「信長の愛した女たち―遠藤周作の歴史小説から」
日時:5月22日(日)午後1時半開場、2時開演
出演:高橋千劔破(作家、文芸評論家)、神田蘭(講談師)
会場:神奈川近代文学館展示館2階ホール
料金:800円
■講演会「河童が語る遠藤周作」
日時:5月29日(日)午後1時半開場、2時開演
出演:妹尾河童(舞台美術家、エッセイスト)
会場:神奈川近代文学館展示館2階ホール
料金:1000円