イラクのキリスト教徒は現実に生じているキリスト教徒らへの殺害によるはかり知れないプレッシャーの中で、信仰によって希望を持ち続けている。イラク教会指導者らは18日、ジュネーブのエキュメニカル・センターで開催された世界教会協議会(WCC)中央委員会において、イラクのキリスト教徒に行われている迫害の痛々しい現実について伝えた。
昨年10月にはイラク首都バグダッドにある教会の集会が軍部の攻撃に遭い、数十人が殺害された。イラクの教会が直面している現実についてアルメニア正教会イラク地区主教のAvak Asadourian博士は「多くの教区が失われ、イラク中の教会で礼拝者数の減少が生じている。このような状態がこのまま続くのであれば、私たちの教会は壊滅的状況に直面することを懸念している」と述べた。
一方でこのような迫害の環境にあってもイラクの教会はコミュニティの中で活発に活動を行い、食料支援や経済的困難にある人々への支援呼び掛けなどを行っているとし、「イラクの教会は非常に必要とされており、困難にある人たちへ与える物資が不十分な状態となっている」と述べた。
アッシリア東方教会イラク教区のMar Georgis Sliwa主教は、イラク国内キリスト教徒にとって最も緊急に必要なことは安全の確保と宗教・倫理観によらずあらゆる国民の人権が尊重されることであると話した。イラク国民が一刻も早く「普通の生活」が遅れるようになり、また同国が発展し海外からの投資がなされるようになることが切望されている。WCC中央委員会において、同主教は、イラクのキリスト教徒数千人を代表してイラクの現実を説明し、「イラクに生活するすべての人たちにとって緊急の必要性があります。(私は今委員会に出席するためにジュネーブに来ていますが)イラクに帰国するときに彼らのための『希望』を持って帰りたいと思っています。多くの艱難の中にありますが、私たちはクリスチャンであり、イラクを愛しています。ですから、私たちには希望があります」と述べた。
イラクでのキリスト教人口は2003年の米軍による侵攻から急激な減少を示しており、当時120万人ほどであったのが現在では40万人から60万人にまで減少していると推定されるという。米軍による侵攻が始まって以来、イスラム教過激派武装組織は意図的にキリスト教徒をターゲットに攻撃を行ってきた。キリスト教徒は西側諸国と関係があるとみなされ、これらの勢力をムスリム軍部はイラク国内から追い出そうとしている。
国際移住機関(IOM)によると数なくともキリスト教徒1000世帯以上がクルジスタンに移住しており、うち3分の2は過去2か月間に生じたものであるという。その他イラク国内に住む150万人近くのキリスト教徒らもシリア、ヨルダン、レバノンおよび西欧諸国への亡命を考えているという。
イラク教会代表者らの報告を受け、WCCオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は「イラクのキリスト教徒たちは世界でもっとも古くから存在しており、迫害に耐え抜いてきたキリスト教徒の一部であるといえます。現実の困難な状況に直面し、はかり知れないストレスと脅威に直面しているすべてのイラクの人々と共に、イラクに住む私たちの兄弟姉妹、教会で奉仕し苦境の中にいる人たちを憂慮しています」と述べた。