財団法人日本キリスト教婦人矯風会(東京都新宿区)は1月28日、パレスチナ自治区ガザで復興支援を行うNPO法人「パレスチナ子どものキャンペーン」の事務局長、田中好子さんを招いての報告会を同会館で開いた。田中さんは、ガザ侵攻から1年が経過しても大きながれきがほとんど撤去されず、全住民の約8割が援助物資に頼っての生活を余儀なくされている現地の状況を説明。「今年もガザを忘れないで」と訴えた。
ガザ市街地の様子は、侵攻から1年経った現在もあまり変わっていない。小学校や病院の窓には、ガラスのかわりに薄いビニールが張られたままで、ある小学校では半壊した校舎を1年間そのままの状態で使用している。イスラエルがセメントや鉄筋などの搬入を厳しく制限しているため、ガザでは手作業でがれきを解体してコンクリートを製造するなどしているが、封鎖によって重機も入らず、復興のめどはいまだ立っていない。
インフラの修復も進んでいない。現在も毎日8時間の停電が続き、停電中は断水となる。下水処理場はほとんど稼動していないため、汚水が路上に溢れ出すこともあるという。
住民の多くはストレスからくる精神的な病気を抱えており、特にガザでは人口の過半数を15歳以下の子どもたちが占めているが、最近の調査によると、15%の子どもたちがPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を見せているという。
生活が苦しく学校に行けない子どもたちも多く、家計を助けるためにがれきの中からプラスチックなどを一日中集め、お金に換えている子どもたちもいる。田中さんによると、これまで子どもの教育を何よりも重視してきたパレスチナでは「今までになかったこと」と言う。
1年経ったいまもほとんどの家屋で再建が進んでおらず、住民はがれきが散乱した家屋の中で暮らしている。住民は、「あまりにもひどすぎて手がつけられない」「今片付けてもまたすぐに攻撃されれば無駄」などと話しているという。
田中さんたちはそんな住民の自立を助けようと、昨年秋から農作物の種子の自給を支援する「種子バンク」プロジェクトを現地でスタートさせた。封鎖でも飢えることのないよう自給率を高めながら、環境の保全も目指している。研修には、ガザ南部ラファの農家から女性を中心に約10人が参加しているという。「日常を女の人たちが頑張っているからこそ、生命があり、未来がある」と田中さんは語る。
田中さんは、「ガザの人々とつながっていくこと」がまず第一だとし、同時に「政治的な解決をするために国際社会が動かなければならない」と訴えた。また、宗教の枠を超えてどうやってみなが手をつないでいけるかが重要だとし、「宗教戦争ではないということを伝えていかなければならない」と強調した。
「パレスチナ子どものキャンペーン」では、負傷者への救急医療支援、支援物資の搬入、子どもの検診、医薬品の提供、心理サポートなど幅広い活動を行っている。同団体への寄付・募金は、ゆうちょ銀行などの口座振込や同団体のホームページで受け付けている。郵便振込は、パレスチナ子どものキャンペーン(口座番号00160・7・177367)。銀行振込は、みずほ銀行高田馬場支店(普)8030448。問い合わせは同団体(電話:03・3953・1393)まで。