精神的な苦痛のケアを受けている終末期がん患者はケアを受けていない患者と比べて良好な状態で死期を迎えられる傾向があるとの調査結果を、米ダナハーバーがん研究所が今月発表した。ケアを受けた患者は臨死期に在宅ケアを選択する傾向も強くなる。
日本人の最も多い死因はがん(30.1%、06年)だが、がんで亡くなる人の9割は病院で死去しているという。宗教信仰をもつ終末期患者の遺族の宗教的緩和ケアに対する満足度の高さを示す調査もあり、キリスト教会の取り組みが今後も期待されそうだ。
米国人を対象とした今回の調査によると、特に宗教信仰をもとに現実を受け入れようとする患者は、精神的なケアを受けることにより、臨死期の人工呼吸器の使用等の積極的な延命医療を希望しない傾向が強くなる。
調査では、全米の病院、がんセンターに入院中の終末期がん患者343人を対象に、現実の受け止め方、医療チームの精神的な緩和ケアに対する満足度、臨死期の治療方法に関する希望を面談形式で質問。その後、患者が受けた医療と緩和ケアの内容を追跡した。調査は2002年9月から08年8月まで行われた。
調査によると、緩和ケアを受けた患者は終末医療の種類や不安感、満足度を指数化した比較で平均28ポイント高いスコアを記録した。
調査担当者は、がん等の終末期にある患者は適切な緩和ケアを施されることによって、身体の苦痛やうつ症状などに顕著な回復がみられ、残された人生を豊かで意味あるものにしようと積極的に努力できることを示している、と総評した。
また、医療関係者と遺族が患者のもつ個人的な宗教信仰や精神的な欲求を継続的にケアすることの有効性を理解し、パストラルケアを積極的に検討してほしいと述べている。