米・ワシントンに本拠を置く調査機関「ワールド・パブリック・オピニオン」(以下、WPO)が世界20カ国1万8千人を対象に特定の宗教を批判する権利について調査した結果、13カ国で過半数が宗教批判など表現の自由を支持していることがわかった。
宗教を批判する権利を支持するという回答の割合が最も高かったのは米国で89%。次いでチリが82%、メキシコ(81%)、英国(81%)の順だった。
「特定の宗教の名誉を傷つける可能性がある宗教批判には、政府が罰金刑や懲役刑を科すべきだ」との設問に「はい」と答えたのは全体の34%だった。
「宗教批判の権利を支持しない」という回答が過半数を占めた7カ国はいずれもイスラム教色の強い国家だった。宗教批判の禁止に賛同する回答の割合が最も高かったのはエジプトで71%。次いでパキスタン(62%)、イラク(57%)の順。
この報告は、宗教批判の禁止を訴える議案が国連人権理事会に提出されたことをうけて、WPOが今月23日(日本時間24日)発表したもの。
議案は56カ国のイスラム教国から成るイスラム諸国会議機構が提出した。議案は「あらゆる宗教、特にイスラム教とイスラム教信者に対する中傷行為、宗教的憎悪をあおる行為と効率的に戦う」よう諸国に呼びかけるというもの。
国連は、人権団体と宗教法人に対し、「この議案は、思想、意見、信仰の自由かつ平和的な表現活動を保障する個人の基本的人権の概念に反する」として条約化の阻止を呼びかけている。
今回の議案に対する共同意見書の中で、国連は「伝統的な法律は、ある事実に関する誤った表現行為によって個人を中傷することを禁じている。だが、『諸宗教に対する中傷』を禁じれば、平和的な思想批評さえ懲罰対象となるケースが出てくる」と見解を述べている。
また、「宗教に対する中傷」という概念は、国連の基礎である「世界人権宣言」が認めている基本的人権の概念と一致しないとしている。
英国の抑圧監視団体「世界キリスト教連帯」(CSW)は共同意見書の中で、「このような議案が条約化されてしまえば、例えばパキスタン国内の『神への冒とく取締法』といった疑わしい法律でさえ一種の『基本的人権』として正当化される」と指摘した。