【CJC=東京】教皇ベネディクト16世とカンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏が11月21日、バチカン(ローマ教皇庁)で約20分間会談した。
同性愛者の聖職叙階や結婚問題、また女性聖職に反対し、世界聖公会共同体に亀裂が入りかかっている中で、カトリック教会が「不快感を持っている人を受け入れる」使徒憲章を公布すると10月20日発表したことから、事態が急進展し、今回の大主教バチカン訪問となったもの。
会談後に発表された声明は、共同ではなかった。バチカン側は大主教訪問の重要性を薄めることに力を入れていた。大主教は教皇でなくバチカンの大学の一つが招待したものだ、としている。「私的な訪問で、儀礼的なものよりは僅かばかり公式な」ものという指摘もある。
会談をバチカンは「心のこもった」とし、ウイリアムズ氏は「友好的」と評価したものの、「憲章の発表の扱われ方に懸念している」と語ったと言う。「明らかに多くのアングリカン(国教会信徒)は、わたし自身を含め、当面やっかいなことになった、と感じている」とウイリアムズ氏は教皇との会談後、バチカン放送に語っている。
ベテランのバチカン・ウォッチャー、ブルーノ・バルトローニ氏は会談の前に、両教会指導者は「善意を前面に出し、エキュメニズムが他の問題でも前進していることを示そうとするだろう」とAFP通信に語った。
「実際に起こったことは、双方がエキュメニズムは失敗したと認めたこと。カトリック教会は女性司祭や司教の問題で決して妥協しないことを明らかにした」。その結果「アングリカンの保守派がカトリック教会に行くことになり、それが現実的だ」と言う。
ウイリアムズ氏と事前に協議しなかったことで、バチカンを無礼だと非難する国教会指導者もいる。ウイリアムズ氏自身が事の経緯を知らされたのは最終段階に入ってからだ、と報じられている。
また聖公会の最近の傾向に幻滅しているアングリカンを教皇が意図的に「密漁」しようとした、と考える人は多い。
しかしウイリアム氏は使徒憲章が与えた衝撃を和らげようとしている。教皇のイニシアチブがこれまでの基本的な関係を変えはしていないし、教皇は一致のための協議を続ける必要を強調した、とウイリアムズ氏は語っている。
ウイリアムズ氏は教皇の「主なメッセージは…憲章がバチカンの聖公会共同体に対する姿勢に何らかの変革をもたらすものではない」と言う。そして女性の聖職叙階や教皇首位性などを次の両派の討議では議題に載せたいと語った。
現在、国教会の450小教区(教会)が離脱しローマへの帰属を検討中という。
ただ実際にカトリック教会への移行には、解決すべきさまざまな問題がある。まず教会堂などの財産問題。多くが美しい建物。カトリック教会側が買い取ろうとしても国教会側に売却意図はなさそう。そこで賃借案も出されている。ただ修理・維持費用をどうするか、なども難題だ。