米国カンザス州で今年5月、妊娠後期の中絶手術を行うことで知られていた産婦人科医が射殺された事件で、米インターネットオークション大手の「イーベイ(eBay)」は2日、同医師殺人容疑で訴追された男の裁判費用を支援する目的で中絶反対派2人が出品していた品数点を競売リストから削除したと発表した。AP通信が伝えた。
問題の品は男の依頼で制作された絵画や、過去に同医師を銃撃した女性が所有する聖書などで、削除理由についてイーベイは「人種や性別、宗教的な不寛容をあおる品物の競売は禁じている」と説明している。
米国では中絶の是非をめぐっての論争が激しく、同医師射殺事件のほか、今年9月にはプラカードを掲げて妊娠中絶反対を訴えていた男性が射殺される事件も起きている。
今年8月に米調査機関ピュー・リサーチ・センターなどが実施した世論調査によると、米国では中絶容認派の割合が近年急激に減少するとともに、反対派の割合が増加し、ほぼ半々となっているという。
また、米パブリック宗教リサーチなどが実施した今年度の宗教活動家調査によると、米キリスト教界では中絶問題について保守派・リベラル派間で見解に大きな隔たりがあり、保守派は95%が「中絶合法化に反対」としたが、リベラル派は約8割が「合法化を支持する」とした。また、リベラル派の26%は「どのような場合でも中絶は許可されるべき」とし、54%は「大概の事例については許可されるべき」との見解を示した。