【CJC=東京】英紙テレグラフによると、オランダの旧約学者エレン・ファン=ウォルデ氏(54)が創世記の冒頭の記述「初めに、神は天地を創造された。」(新共同訳)はヘブル語原典からの正確な訳出ではない、と主張している。
聖書記者は、神が世界を創造したことを示唆しようとしたのではなく、実際に神が人間やけものを創造した時には「地」はすでに存在していた、と言う。
ファン=ウォルデ氏はオランダ・ナイメーヘンの出身校のラットバウト大学で自説を講演することになっている。同氏はヘブル語原点を再検討し聖書全体の文脈の中で、さらに古代メソポタミアの創造物語などとも比較した。
創世記の冒頭で使用されているヘブル語の動詞「バラ」は「創造」を意味するものではなく、「空間的に分ける」を意味しているとの結論に達した。第1章第1節は「初めに神は天と地を分けられた」と読むべきなのだ。
今回の研究は、聖書の「初め」は時間としての始まりではなく、物語の始まりであることを示すものだ、と言う。神は創造されたのではなく、天から地を、海から陸を、鳥や地に満ちているものから海の怪物を、分けられた。
これまで考えられてきた「クレアティオ・エクス・ニヒロ」(無からの創造)は誤解であり、神は、すでに存在していた地球を生物の住めるところとし、地と水を分け、暗闇に光をもたらしたのだ、と言う。
同氏は、自らの見解が目新しいだけでなく、多くの宗教者の核心に触れるものだとして、活発な議論が展開されることを望むと語った。「わたし自身も傷つくかもしれない。自分を宗教的であり、創造者は信頼の対象として特別なものと見てきたからだ。その信頼は持ち続けたい」と語った。
ラットバウト大学の報道担当は、「この新しい解釈は、これまで知られていた創造物語を完全に改革するものだ」と語った。同氏は「創造神という伝統的な見解は、もう維持できない」と付け加えた。