黒死病(ペスト)で地域の人口が激減したことで、650年以上にわたって閉鎖されていた英南東部ケント州にある2つの歴史的教会が、一般公開されることになった。わずか1・5マイル(約2・4キロ)しか離れていない姉妹教会であるドーデ教会と聖ベネディクト教会は18日、同時再開を記念するイベントを開き、来訪者を歓迎した。
1100年代初頭にさかのぼる両教会は、1359年に黒死病に襲われるまで、地域社会の中心として栄えていた。しかし黒死病は、同州北西部にかつてあったドーデ村の人口を一掃し、ドーデ教会だけが残った。その後、担当司祭は同州南東部のパドルズワースに移り、ドーデ教会は何世紀も使われないまま残った。
ドーデ教会の現管理人であるダグラス・チャップマン氏は、約35年前にこの場所を購入して以来、数十年かけて教会堂を修復してきた。ノルマン様式の石組み、基礎、屋根のデザインは、英国のキリスト教礼拝所を研究する者たちの関心を集める。
この修復を「愛の労働」と呼ぶチャップマン氏は、ドーデ教会を元の状態に復元する大掛かりな作業について語った。「この教会は600年以上も閉ざされていました」。チャップマン氏はそう言い、1900年代初頭に屋根がふき替えられていたものの、建物はひどく傷んでいたと続けた。
チャップマン氏がドーデ教会を手に入れた当時、教会としての神聖さが汚されている一面があった。時には田舎の「麻薬の巣窟」として使われるなどして、悲惨な状態だった。その後10年以上かけて、チャップマン氏は丹念に敷地を整備し、元の特徴を復元し、電気や水道などの基本的な設備を設置した。
チャップマン氏は英タブロイド紙「メトロ」(英語)に対し、「この場所は1367年に司祭がパドルズワースに派遣されて以来、基本的に手をつけられていなかったか、少なくとも使われていませんでした」と述べ、教会の再開に至るまでの長い修復の道のりを振り返った。
両教会は、ノースダウンズと呼ばれる丘陵地帯にある。来訪者は、その豊かな歴史を垣間見ることができ、2つの教会を結ぶ風光明媚(めいび)な小道を歩くよう案内された。
「両教会は常に満席でしたが、過密ではなく、人々はノースダウンズの2つの教会の間を歩いて行き来しました。2つの教会がこのようなことをするのは初めてのことです。両教会はとてもよく似ています。両者は非常に近く、ウィリアム1世(征服王)の治世末期の1100年ごろに、ほぼ同じ形で建てられました」
ドーデ教会の真下もしくは付近に集団墓地があるとされているが、チャップマン氏は考古学者らによる発掘作業を拒否している。
来訪者は、写真展、古地図、歴史的文書(ドーデ小教区とパドルズワース小教区が統合された1367年にさかのぼるものも含む)を見ることができる。
同州北東部ロチェスターで奉仕し、ドーデ教会を建てたグンドルフ(ガンドルフ)主教が、J・R・R・トールキンの長編小説『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』に登場する魔法使いガンダルフにインスピレーションを与えたと、地元で信じられていることについてもチャップマン氏は触れた。
「トールキンは中世史の教授で、グンドルフのことは何でも知っていたはずです。グンドルフがガンダルフになったという説がありますが、既にトールキンが没しており、それを確かめられないのは残念です」
ドード教会は、結婚式や幼児洗礼式などに利用でき、今後も6週間に1度一般公開される。また、聖ベネディクト教会の見学もいつでも申し込むことができる。
チャップマン氏は、「人々が2つの歴史的教会を訪れ、その歴史とそこに費やされた苦労を評価してくれることを願っています」と語った。