1. 心の監獄
何事もなく順調な人生などはどこにもない。親からの虐待やネグレクト、配偶者によるDV、不慮の事故や病気、大切な家族の死、試験や仕事の失敗・・・多くの人がこうして心に傷を負い、自分の「心の監獄」に閉じこもってしまう。
しかし、鉄格子がどれほど頑丈であっても、そこから抜け出すことができる。それを開ける鍵は自分のポケットに入っているのである。それは「選択の自由」という鍵である。トラブルを避けることができなくても、それにどう対応するかは自分自身で選択できる。
以上は、『心の監獄』(著者:イーガー、エディス・エヴァ他2名、出版社:パンローリング)の要旨である。
著者の臨床心理学博士イーガー氏(1927年ハンガリー生まれ)は、まだ10代だった1944年に家族と共にナチスの死の収容所アウシュヴィッツに送られた。両親はそこで命を落としたが、翌年に戦争が終わり、彼女はそこから解放される。
しかし、最悪の監獄は「アウシュヴィッツ強制収容所」ではなく、その後の数十年にわたって彼女を苦しめた「心の監獄」であった。過去から逃げ、悲嘆とトラウマを否定し、自分を抑え、偽り、人を喜ばせようとしてきたが、彼女は過去の地獄の恐怖という「心の監獄」から抜け出すことができなかった。彼女は勇気をもってその恐怖に向き合い、どうしたら抜け出すことができるかを模索し、ついに脱出することができた。その選択療法は4つの心理学の基本方針に根差している。
①悲観主義ではなく楽観主義を選ぶこと。
②否定的な信念を肯定的な信念に置き替えること。
③条件付きでなく無条件で、ありのままの自分を愛すること。
④最悪の経験は最良の教師であると信じること。
2.「心の監獄」を開ける本当の鍵
イーガー博士の提唱する鍵は、非常に有効な方法論ではあるが、実際にそれを選択できる人は少ないのではないか。また、選択できても実行できる人は多くはないのではないか。聖書はもっとシンプルな鍵があることを教えている。それは「聖霊」という鍵である。
深刻な問題で苦しみ、心が傷ついた男性が法律相談に来た。私は心で祈りながら話を聞いていたが、その方に同情して自分も苦しくなってきた。私が一言も話さないうちに突然、その方は泣き始め、声を出して30分以上も泣いていた。私は自分の内から力が抜けていくような感じがした。やがて泣き終わると、彼はこう言って、笑顔で帰っていった。
「自分の話をしているうちに心が急に温かいものに包まれ、うれしくなって涙が止まらなくなりました。男のくせに声を出して泣いてしまい、非常に恥ずかしいです」「この問題はもうどうでもよくなりました。私を苦しめた憎い相手に対する長い間のわだかまりが消えてしまったのです」
私の内にある聖霊がその方の中に流れ込んで行ったとしか考えられない。そのような方とは何人も会っているし、私自身も同じ体験をしている。神に救いを求め、癒やしを求め、解放を求めていくならば、聖霊の働きによってそれが実現するのである。
12年も長血をわずらっている女がいた。この女がイエスのことを聞いて、群衆の中にまぎれ込み、うしろから、み衣にさわった。すると、血の元がすぐにかわき、女は病気がなおったことを、その身に感じた。イエスはすぐ、自分の内から力が出て行ったことに気づかれて、群衆の中で振り向き、「わたしの着物にさわったのはだれか」と言われた。(マルコ5:25~30)
◇