1. 中国人の明るい希望
「ミスター・ササキ、これからはビジネスを手段として福音を伝えていく時代です。中国と韓国と日本のクリスチャン・ビジネスマンが協力して、世界中に福音を伝えていきましょう」
香港にいる知人のクリスチャンが来日した際に、自分がメンバーになっている東京麻布のアメリカンクラブで会食しながら、私に対してこう語った。将来の希望に目を輝かせながら、自分がいかにしてビジネスを通じてアジア各国に福音伝道の拠点を設け、そこから大勢の人々が救われているかを、時間がたつのを忘れるほど熱心に話してくれた。
香港は1997年に英国から中国に返還されて以来、中国化が進んでいるが、彼は希望を持って生き生きとしていた。
2. 日本人の暗い失望感
2019年に行われた「18歳意識調査」によると、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、英国、米国、ドイツおよび日本の9カ国のうち、「将来、自分の国は良くなる」という希望を持っている日本人はわずか9・6%で、最低であった。中国人は96・2%が自国の将来に希望を持っているので、その十分の一に過ぎない。また、「自分で国や社会を変えられると思う」と答えた日本人は5人に1人で、残る8カ国で最も低い韓国の半数以下であった。(日本財団、2019年11月30日配信)
国家と社会を背負っていく若者の大多数が日本の将来に失望しているということは、由々しき事態であると思う。希望を失うと、生きる気力が失われ、ただ状況に流され翻弄されるだけの人生になっていく。失望はやがて絶望になり、絶望は人を死に至らしめる。(キルケゴール『死に至る病』)
3. 希望を持つには
それでは、どうしたら希望を持つことができるのであろうか。
Aさんは東南アジア某国の会社で、日本から派遣された社員として真面目に働いていた。ある日、現地のバーで知り合った女性に頼まれて、小さなかばんを預かった。その翌日、数名の警察官が彼の住んでいたマンションを家宅捜査し、そのかばんを押収した上、その場で彼を逮捕した。その中には大量の麻薬が入っていたのである。
担当の警察官から多額の賄賂を要求されたが、Aさんはそれに応じなかった。そして結局、懲役10年の有罪判決が言い渡され、彼はそのまま服役する身となった。
会社から懲戒免職の通知が届き、日本にいた妻から協議離婚申立書が送られてきた。現地の女性とグルになって自分を陥れた警察官を憎み、解雇した会社や離婚した妻を恨み、自分の理不尽な人生に絶望して、彼は獄中で何度も自殺を企てたが死ねなかった。
そんな彼を現地の教誨(きょうかい)師が訪ねてきて、聖書を差し入れてくれた。むさぼるように聖書を読んだ彼は、無罪なのに自分を十字架につけて殺そうとしていた人たちを赦(ゆる)したキリストの姿に感動し、神を信じて救われた。
希望の神により、自分の将来に永遠の希望を見いだしたのである。10年の刑期を終えて出獄した彼は、起業して成功し、クリスチャンの女性と再婚し、希望を持って生活している。まさに希望は生きる力であり、将来を築き上げていく原動力である。聖書こそが私たちに真の希望を与えてくれる。
希望とは、どんな暗闇の中にあっても、光を見いだせることである。(デズモンド・ツツ大主教:ノーベル平和賞受賞者)
主を待ち望む者は新たなる力を得、わしのように翼をはって、のぼることができる。走っても疲れることなく、歩いても弱ることはない。(イザヤ40:31)
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