1. ノーベル賞温泉
2年ほど前に仕事で山梨県の韮崎市を訪問した折に、地元で有名な日帰り温泉施設「ノーベル賞温泉」に立ち寄った。正式な名称は「武田乃郷白山温泉」。甲斐の武田信玄が築城した「白山城」の麓に湧出した温泉である。天然かけ流しで、露天風呂からは八ヶ岳、茅ヶ岳がまるで一幅の美しい絵画のように眺望できる。
2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智博士が、生まれ育った韮崎市への恩返しとして2005年に設立した温泉場であり、敷地内には、同じく大村氏が設立した美術館と蕎麦屋が併設されている。
2. 決して諦めない
最近、大村氏の関係者から白山温泉掘削についてのエピソードを聞いた。大村氏は私費を投じて温泉を掘ることを思いついたが、地元の各地にはすでに幾つかの温泉があった。美術品収集家でもあった大村氏は、大自然の美しさをそのまま鑑賞できる温泉を造りたいと願って場所を選び、収集した美術品は全て韮崎市に寄贈した。
ところが、温泉の掘削を進めるに従い、次々に固い岩盤にぶつかって工事は難航を極めた。多くの関係者は途中で諦めて、別の場所を掘るように何度も助言した。しかし、一度取り組んだからには完成するまで諦めずにやり抜いてきた大村氏は、「温泉は必ず出る。費用が問題なのではない。やり抜くかどうかが問題なのだ」と言い切って断固として掘削を続けた。そしてついに温泉の水脈を掘り当てたのである。
3. 粘り強い祈り
神を信じる者は、どんなことでも神に祈り求めることができる(ヨハネ15:7)。人間の常識では実現不可能なことでも神に願い求めることができるのである(マルコ11:23)。しかし時には、願ったことがかなえられるまで、失望せずに粘り強く祈る必要がある(ルカ11:5~13)。「粘り強く」とは「忍耐強く」という意味である。
願いが大きければ大きいほど、その実現を阻む障害(問題)も大きい。願い求める過程でさまざまな試練に遭遇し、神に依存せざるを得なくなる。その結果、その人の信仰が強化される。言い換えれば、内なる人(神の子)と内なる神(聖霊)との結びつきが強化されていく。そこから、どんな苦難にもくじけずに耐え抜いていく忍耐力(練られた品性)が生み出される。
こうして、内なる人(神の子)が、キリストのように完全な人として成長していくのである(ヤコブ1:2~4)。結果として、内なる神(聖霊)の力によってその人の希望が実現していく。
「神のみ旨を行って約束のものを受けるため、あなたがたに必要なのは、忍耐である」(へブル10:36)
「この世に、粘り強さに勝るものはない。才能?才能があっても成功できなかった例は枚挙にいとまがない。天才?報われない天才という言葉は、すでに決まり文句になっている。教養?世の中は教養ある浮浪者であふれている。粘り強さと断固たる信念だけが、無限の力を持つのだ」(カルビン・クーリッジ、第30代米国大統領)
「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わぬ裁判官がいた。・・・ひとりのやもめがいて、彼のもとにたびたびきて、『どうぞ、わたしを訴える者をさばいて、わたしを守ってください』と願いつづけた。彼は・・・心のうちで考えた、『・・・彼女のためになる裁判をしてやろう。そうしたら、絶えずやってきてわたしを悩ますことがなくなるだろう』」(ルカ18:2~5)
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