世界大手の世論調査会社「イプソス」(本社:パリ)が、世界の主要26カ国を対象に行った「国際宗教調査2023」(英語)によると、日本は、聖書やコーランなどの聖典に記されている神を信じている人がわずか3%しかおらず、26カ国の中でも群を抜いて少ないことが分かった。また、祈ったり、教会や寺院などの礼拝所に行ったりする宗教的実践を行っている人も、最も少なかった。
調査は、米国や英国などの欧米、日本や韓国などのアジア、ブラジルやメキシコなどの中南米の各地域の計26カ国で、1月20日から2月3日にかけて実施。各国500~2200人の成人に対し、主にオンラインで尋ねた。対象としたのは75歳未満の成人で、下限の年齢は国によって16歳から20歳まで幅がある。回答者は26カ国で計1万9731人に上り、日本は約1000人から回答を得た。
日本、神や「高次の力」に対する信仰で最下位
神や「高次の力」(higher power)に対する信仰を尋ねる設問で、日本は「聖典に記された神を信じている」を選択した人が3%しかおらず、世界平均の40%を大きく下回った。一方、「聖典に記された神は信じていないが、高次の力や霊は信じている」を選択した人は16%で、聖典に記された神を信じる人の5倍以上に上った。しかしそれでも、両者を合わせた割合(19%)は、26カ国の中では最も低く、世界平均(61%)の3分の1以下だった。
これに対し、「神や高次の力、いかなる種類の霊も信じていない」を選択した人は38%で、「分からない」は34%、「答えたくない」は10%だった。各回答の世界平均は、それぞれ21%、12%、7%で、いずれも日本が上回った。
また、▽天国、▽超自然的な霊(天使、悪霊、妖精、幽霊など)、▽地獄、▽悪魔それぞれの存在を信じるかを尋ねる設問では、日本は天国を信じる人が28%(25位、世界平均52%)、超自然的な霊を信じる人が35%(20位、同49%)、地獄を信じる人が25%(20位、同41%)、悪魔を信じる人が20%(25位、同41%)で、いずれも下位層に位置した。
神や高次の力に対する信仰が持つ役割を尋ねる設問でも、日本ではこれらの信仰に対する評価が低かった。
「神や高次の力を信じることは、困難(病気、紛争、災害など)を乗り越える力を与えてくれる」に同意した人の割合は、世界平均は76%だったが、日本はその約半分の37%だった。これは26カ国の中で最も低く、50%で25位だった韓国とも13ポイントの差があった。
また、神や高次の力を信じることが、「人生の意味を与えてくれる」に同意した人の割合は47%(25位、同76%)、「平均よりも幸せにしてくれる」に同意した人の割合も37%(26位、同71%)で低かった。
日本は宗教的実践でも最下位
日本は、宗教的実践においても26カ国で最も消極的な国だった。
月に1回以上、礼拝所(教会、寺院、モスクなど)以外の場所(自宅など)で祈る人は9%(世界平均44%)、礼拝所に行く人は5%(同28%)しかおらず、いずれも最下位だった。
宗教に対する日本人の見方は否定的傾向
日本は、宗教に対する見方も否定的な傾向が見られた。
「自国の市民として道徳的な生活をする上で宗教的実践は重要な要素である」に同意する人は25%(同54%)で、26カ国の中では最低だった。しかしそれでも、2017年の前回調査に比べると、10ポイント増加しており、増加幅は26カ国の中で最も大きかった。
「宗教的信仰を持っている人はより幸せである」に同意する人は27%(同48%)で、これも26カ国の中では最低だった。
一方、「宗教は世界で善よりも害をもたらしている」に同意する人は52%(同47%)で、26カ国の中では9番目に高い割合となった。この割合は、前回調査に比べ26ポイントも増加しており、増加幅は26カ国の中で最も大きかった。
また、「宗教的信仰を持っている人たちはより良い市民である」に同意する人は20%(24位、同37%)、「宗教的信仰を持っていないことを知ると、その人に対する尊敬心を失う」に同意する人は10%(25位、同20%)で、いずれも最下位層に位置した。
しかしその一方で、「自分の宗教が自分を人とならしめている」に同意する人は37%おり、26カ国の中でもほぼ中間(13位)に位置した。またこの割合は、前回調査に比べ23%増加しており、増加幅は26カ国の中で最も大きかった。
それでも宗教信じる日本人は4割
日本は、神や高次の力に対する信仰を持っている人や、宗教的実践を行っている人の割合が、26カ国の中で最も低かったものの、それでも何らかの宗教を信じている人は4割を超えた。
自身が信じる宗教を尋ねる設問で、キリスト教を選択した人は2%にとどまったが、仏教や神道を含むその他の宗教を選択した人は39%に上り、合計すると41%となった。
しかしそれでも、無宗教(無神論、不可知論、宗教は信じていないがスピリチュアルなものは信じている)を選択した人は46%に及び、何らかの宗教を信じている人の割合を上回った。この他、13%は「答えたくない」を選択した。
今回、調査が行われた26カ国は以下の通り。順番は、神や高次の力を信じる人の割合に基づく。( )内は、神や高次の力を信じていると回答した人の割合の合計。
ブラジル(89%)、南アフリカ(89%)、コロンビア(86%)、メキシコ(85%)、ペルー(84%)、トルコ(82%)、インド(81%)、チリ(76%)、アルゼンチン(76%)、米国(73%)、シンガポール(68%)、ポーランド(64%)、カナダ(60%)、イタリア(60%)、オーストラリア(56%)、タイ(49%)、ハンガリー(47%)、ドイツ(45%)、スペイン(45%)、フランス(42%)、英国(43%)、ベルギー(42%)、スウェーデン(41%)、オランダ(39%)、韓国(33%)、日本(19%)。