先月28日に再選されたエルドアン大統領は、20年もの長期にわたって政権を担ってきたが、これでさらに5年の任期が加わることになる。大統領選挙は、決選投票までもつれ込み、開票の結果エルドアン氏が52・1%の票を獲得し、対するクルチダオール氏は47・9%の票を確保するにとどまった。
トルコは、欧州と中東の間に位置しNATO(北大西洋条約機構)加盟国で、かつ、黒海沿岸国で、地中海への唯一のアクセスとなるボスポラス海峡を有する。さらには、ウクライナの正教会を巡って、モスクワ総主教庁との摩擦を深めるコンスタンティノープル全地総主教庁は、トルコの最大都市イスタンブールにあるのだ。
トルコは、今回のロシア・ウクライナ間の紛争のみならず、明日の世界の大局を左右しかねないキャスティングボートを握る国の一つといえよう。
今回の選挙で、トルコ国民は現状維持の路線を選択したことになる。親イスラムのエルドアンは、脱世俗的イスラムの路線を公約しており、今後の5年は、より強くイスラム色を打ち出すとみられる。
キリスト信者にとっては、現状が維持される見通しだ。トルコでのキリスト者に対する迫害は、政府レベルというよりは、ほとんどが家族レベル、地域レベル、あるいは雇用レベルで起こっている。
しかしトルコのキリスト信者にとって、地震などの国家的課題の多くは、チャンスなのである。例えば、2月に発生したトルコ南部の大地震の直後、キリスト教徒やキリスト教系の援助団体が、主イエスの名の下に、いち早く被災地での積極的な援助活動に当たり、食料や避難所を提供した。
多くのトルコ人にとって、イスラム教徒であることはトルコ人のアイデンティティーに深く結びついており、この2つは切っても切れないと考えている。ところが、トルコのキリスト者たちの真摯(しんし)な援助活動は、非キリスト教徒のトルコ人にとっては、目から鱗の体験だったのだ。
彼らは、普段あまり接点のないトルコ人キリスト教徒に「あなたはトルコ人でありながらイエスの信者なのですね。いったいどうしてそうなったのですか」というふうに聞き、証しをする機会となっているのだ。
明日の世界情勢を占う上で重要な位置にいるトルコだが、再選されたエルドアン大統領に摂理的に神の知恵と御手が及ぶよう祈ろう。キリストにある兄姉たちが勇気をもって伝道の機会を十分に生かし、福音を伝えることができるよう祈っていただきたい。
■ トルコの宗教人口
イスラム 96・6%
プロテスタント 0・03%
カトリック 0・06%
正教 0・03%
ユダヤ教 0・02%