世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の代表者らは15日、首相官邸を訪問し、19日から広島で始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向けた提言書を、岸田文雄首相に手渡した。
提言書は、WCRP日本委が10日、カトリック幟町(のぼりちょう)教会世界平和記念聖堂(広島市中区)で開催した「宗教者による祈りとシンポジウム」で採択したもの。この日は、WCRP日本委理事長で浄土宗心光院住職の戸松義晴氏や、カトリック広島教区司教の白浜満氏ら8人が訪問し、岸田氏と約15分にわたって会談した。
提言書は、広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれた「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」という言葉に「ヒロシマの心」が現れているとし、「G7サミット参加国指導者に、この『ヒロシマの心』の真意を深く胸に刻んでサミットに臨むよう、心から切望する」と表明。具体的には、▽分断から和解、対立から対話へ、▽核戦争回避と核兵器廃絶、▽地球の持続可能性への責任、▽SDGs達成への責任、▽極端な経済格差の是正、▽信教の自由の堅持――の6項目を提言している。
岸田氏は、提言書の提出に謝意を示した上で、「原爆によって壊滅的な被害を受け、その後力強く復興を遂げ、世界に向けて平和を訴えている、この広島という場所に世界のリーダーが集まることは、大変大きな重みをもっている」と、G7サミットが広島で開催される意義を強調。ロシアが行っている力による一方的な現状変更や核兵器による威嚇については、「絶対に許してはならない」とし、G7の首脳が世界に向けて「法の支配による自由で開かれた国際秩序の大切さを明確に示していきたい」と語った。その上で、今回の提言書に触れ、「提言のポイントを念頭に置きながら、しっかりと議論を行っていきたい」と述べた。
これに対し戸松氏は、「宗教者による祈りとシンポジウム」で被爆者の森重昭さんから証言を聞いたことに触れ、「あのようなつらい思い、悲しい思いを二度と起こしてはならないと感じた」とコメント。G7サミットに参加する各国首脳らには、「原子爆弾を使うとどういうことが起きるのかを感じていただきたい」と語った。また、岸田氏に対しては、「核兵器のない平和な世界の実現に向けて、日本のリーダーシップを示していただきたい」と要望した。
岸田氏はこれを受け、昨年、日本の首相として初めて出席した核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議で成果文書がまとまらなかったことについて触れ、「核軍縮を巡って、世界が今、分断されている」と説明。そのような状況の中でも、「核兵器のない世界を目指すという理想は、皆で掲げ続けていなかければならない松明である」と強調し、今回のG7サミットを「核兵器のない世界を目指そうとする機運を再び盛り上げるきっかけにしていきたい」と語った。