米国のジョー・バイデン大統領は日曜日の15日、エベニーザー・バプテスト教会(米ジョージア州アトランタ)で行われたマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師を記念する礼拝で演説した。キング牧師を聖書に登場するモーセやヨセフ、洗礼者ヨハネになぞらえ、米国の公民権運動を導いた指導者をたたえた。同教会は、キング牧師がかつて牧師を務めた歴史ある教会で、15日はキング牧師の誕生日だった。
米国では、キング牧師の誕生日に近い1月第3月曜日が「キング牧師記念日」として祝日になっている。今年は16日が記念日で、バイデン氏はその前日である15日午前11時からの礼拝に出席し、会衆に次のように語った。
「彼(キング牧師)はモーセの道を歩み、人々を鼓舞し、恐れず、常に信仰を保つよう呼びかけました」
「彼は、夢と、夢が運ぶ神性と、夢が持つ約束を信じる者であるヨセフの道を歩みました。そして、光の証人となるために来た洗礼者ヨハネのように、われわれのために前途にあるより大きな希望への備えをしたのです」
そして、キング牧師は「正義のための非暴力の戦士」であったとし、「主であり、救い主である方の言葉と道に従った」と語り、自分たちもキング牧師の道を歩む必要があると語った。
バイデン氏はまた、キング牧師の妻であるコレッタ・スコット・キングさんにも賛辞を贈り、「私の考えでは、今日は彼女の日でもあるのです」と語った。
「私は、両親と、学校で教えてくれた修道女や司祭のおかげで神を畏れてはいますが、説教者ではありません。しかし、皆さんと同じように信仰を貫こうと努力してきました。私は、私のかけがえのない政治的ヒーローの一人である説教者、キング牧師に触発されて、今ここに立っています。彼のメッセージは霊的で道徳的でした。米国の魂を取り戻すために、われわれは神のかたちの中で、皆平等に創造されたのです」
バイデン氏は、米国と世界は現在、「重大な分岐点」にあるとも述べた。
「第2次世界大戦後と同じように、世界は変化しており、その方向性はこの国が下す決断にかかっています」
また、歴史ある同教会で現職の大統領として初めて演説することは、自身を謙虚な思いにさせるとも述べた。
バイデン氏は、13日に発表したキング牧師記念日に関する布告(英語)で、次のように語っている。
「説教壇から演壇、そして街頭まで、キング牧師は、わが国におけるこの最愛の共同体の探求のために、その生涯をささげました。彼の行動主義と道徳的権威は、1964年の公民権法と65年の投票権法の制定を促しました。彼は、変化を切望する何百万もの人々のやむことのない精神に声を与えました。彼は私たちに、統一し、癒やし、そしてわが国の祝福を全ての人にとどめるための道しるべを与えたのです」
エベニーザー・バプテスト教会は1886年に設立され、キング牧師の父であるマーティン・ルーサー・キング・シニア牧師が、1927年から75年の引退まで牧師を務めた。キング牧師はこの教会で育ち、洗礼を受け、60年から暗殺される68年までの8年間は、共同牧師として関わった。
15日午前9時からの礼拝では、民主党の上院議員でもある同教会のラファエル・ワーノック牧師が説教を行った。
約6千人の会員数を誇る同教会は2021年、ワーノック牧師が米上院選の決戦投票で勝利し当選したことで、再び注目を集めた。当時の勝利演説で、ワーノック牧師は次のように語っている。
「米国ならではのことですが、他者の綿花を摘んでいた82歳の女性が先日投票所に行き、末っ子を上院議員に当選させました。私をこの国の歴史的瞬間に、この場所まで導いたあり得ない旅は、ここでしか起こり得なかったでしょう」