アジアキリスト教病院協会(ACHA)の第26回総会が10日から12日にかけ、韓国・全州(チョンジュ)のプレスビテリアンメディカルセンターで開催された。
新型コロナウイルスに対する各国の水際対策の違いもあり、現地参加とオンライン参加のハイブリッド形式で行われた。韓国、台湾、タイ、日本の他、ACHA加盟病院からスタッフが派遣されているケニヤ、ネパールからの参加者もあった。
総会テーマは、「第4次産業革命の影響を受けた医療におけるキリスト教信仰の取り組み」。近年急激に進む医療の人工知能(AI)化とその活用について、最先端の状況についての発表や課題を含めた議論が行われた。
主題講演は、日本からオンラインで参加した神戸アドベンチスト病院の森経春(つねはる)院長が、「私たちが暮らす世界と予見する未来」と題して行い、現在のAI活用とこれからの予測と課題を提示した。
森氏は、AI活用による現時点の利点について、診療待ち時間の短縮や診察の質向上を挙げ、これからの超高齢社会における医療負担軽減にもつながると語った。その一方で、診察室のパソコンの存在は、患者との関係を物理的にも心理的にも妨げている現状があると指摘。また、これからは医療の質とコストのバランスが問われること、AIによる診断の正確さが急激に向上し、人間による診断よりもはるかに進んでいるというハーバード大学やIBM社による研究結果などを紹介した。
医療のAI化は利点も多いが、そこには課題も多くある。森氏は、特にAIが診断や医療の実践に重要な役割を果たすようになったとき、いかに人間の絆を取り戻せるかが重要になるとし、最後に旧約聖書の箴言2章6~8節を引用し、講演を締めくくった。
主が知恵を与え、御口から知識と英知が出るからだ。主は正直な人のために、すぐれた知性を蓄え、誠実に歩む人たちの盾となり、公正の道筋を保ち、主にある敬虔な人たちの道を守られる。(箴言2:6~8、新改訳2017)
総会では、森氏の主題講演の他、韓国、台湾、タイ各国の代表者が、AIの活用と最先端の研究に関する発題を行った。また、神戸アドベンチスト病院の久木田和夫副院長、淀川キリスト教病院の笹子三津留外科特別顧問、鍋谷まこと統括副院長は討論者として、議論に参加した。
日本から現地参加をしたオリブ山病院(那覇市)を運営する社会医療法人「葦(あし)の会」の田頭真一理事長は、次のように感想を語った。
「特に日本からの発表は、AIの活用と課題について考えさせられる内容でした。AIは今後、葦の会にもさまざまな影響を与えるでしょうが、理念との関わりでどのように活用するかが倫理的に問われることを覚えました。
特に利点と課題の中で、人格関係をどうするか。笹子先生はスピリチュアルケアと死の問題について、鍋谷先生は罪の問題がAIを活用しても避けられないことについて、鋭く切り込まれました。急激に変化していく世界情勢において、確かな最善の医療をもってキリスト教病院がどのように人々に仕えていくかが問われています」
ACHAの総会は、今回までは毎年開催だったが、次回からは隔年開催となる。そのため、第27回総会は2024年の開催予定。開催地は沖縄で、日本キリスト教病院協会(JCHA)が事務局となり、オリブ山病院、アドベンチストメディカルセンター(沖縄県西原町)他、キリスト教主義を掲げる病院が協力してホスト役を務める。