ロシアによる軍事侵攻が始まってから間もなく6カ月がたとうとするウクライナでは、これまでに約400のバプテスト派教会が失われたという。ウクライナには約2300のバプテスト派教会があるとされ、そのうちの約2割が失われたことになる。
ウクライナ西部リビウにあるウクライナ・バプテスト神学校(UBTS)のヤロスラフ・ピシュ学長が12日、米南部バプテスト連盟(SBC)が運営するメディア「バプテスト・プレス」(英語)の取材で明かした。一方、ピシュ氏は「(教会の)建物を建て直しても、教会を指導する牧師がいなければ、何の役にも立ちません」と話し、リーダーシップの立て直しの必要性を強調。バビロン捕囚後にエルサレムに帰還し、神殿再建を指導したネヘミヤの物語を引き合いに出し、「本当の課題は、ネヘミヤの課題と似ています。エルサレムの城壁を再建することだけではないのです。イスラエルという国を再建し、神を礼拝することを回復させるのです。それは、ここウクライナでも同じです」と語った。
ピシュ氏は、多くの牧師が戦火の激しい地域から離れなければならなかったとする一方、国内にとどまる牧師も多くおり、教会が戦時下の人々の必要に大いに応えてきたと語った。
ウクライナ国内には現在、地域教会の伝道活動から発展し、各地域の自治体と協力して設立された人道支援センター「ウィ・ケア・センター」が6つあり、UBTSの卒業生や在校生ら約150人がボランティアとして働いている。UBTSは、ボランティアがカウンセラーとして奉仕できるよう訓練を提供。SBCによる寄付も、センターの働きのために用いられているという。
ピシュ氏は、こうした教会が関わる人道支援センターについて、「基本的な考え方は、教会が互いに協力して地域社会に奉仕するためのプラットフォームを提供することです」と説明。「戦時中のニーズに応えるだけでなく、実際に地域社会の中に長くとどまることができるものをつくるのです」と話す。
ピシュ氏によると、ウクライナのインフレ率は30パーセント近く、市民の生活を圧迫している。そのため、UBTSは現在、授業料の徴収を停止し、無償で教育を提供しているという。その代わり、教育活動を継続するための資金調達に力を入れている。一方、ウクライナに対する寄付は戦争が長引く中、大幅に減少しているとし、ピシュ氏は継続的な支援を訴えている。