聖オルバン教会(東京都港区)で19日、ウクライナからの避難民を支援するイベントが開催され、衣服などの日用品や散髪、ネイルアートなどが無料で提供された。同教会で礼拝を行っている在日ウクライナ正教会と、支援団体「ウクライナ・日本の架け橋」が協力して開催した。
ウクライナ・日本の架け橋は、国内の有志が立ち上げたフェイスブックのグループで、現在5600人を超えるメンバーがいる。日本に来た避難民の生活を支えようと、5月にも港区内の幼稚園で同様のイベントを開催し、今回は2回目。無料で提供した日用品は、グループの呼びかけに応じた個人や企業から寄せられたものだ。
避難民の多くはこの日、在日ウクライナ正教会の礼拝に参加した後にイベントに参加した。ウクライナ・日本の架け橋のメンバーの一人である糸澤雅子さんは、「ウクライナ人にとって教会は生活の一部。教会が会場になったことで、集まりやすかったのでは。避難民同士の交流の場にもなったと思う」と話す。
ウクライナからの避難民に対しては、日本財団が渡航費や住環境整備費、1人当たり年100万円の生活費などを支援する活動を行っている。しかし、それでも「健康な人が生きていく最低限の費用にすぎない」と糸澤さんは話す。戦火を逃れてきた避難民の多くは心に傷を負っており、今、最も必要とされている医者は精神科医だという。精神科を受診した避難民もいるが、健康保険が適用されても請求される診療費は大きな負担で、継続的な受診は難しいと考える人が多い。
国外へ逃れたことで直接的な命の危険にさらされることはないものの、ウクライナからは日々、厳しい戦況を伝えるニュースや近親者の訃報などが入り、日本での生活苦も重なって、「日本に来ても全然幸せを感じられず、働くことまで力が回らない状況」。避難民向けの求人もあるが、早朝の短時間労働など、多くが子連れの女性である避難民にとっては、就労自体が難しいものばかりという。「このままでは自殺者が出てもおかしくない」と危機感を募らせる糸澤さんは、政府のより積極的な対応が必要だと考えている。
3月中旬にウクライナの首都キーウから子ども3人を連れて来日したオルハ・ズラベルさんは、知人がいたため避難先を日本に決めた。それでも、ズラベルさんと子ども1人が一つのアパートで暮らし、子ども2人は別のアパートで生活しなければいけない状況にある。日本では特に、さまざまな場面で必要になる書類手続きが困難で、ポーランドに避難している母親を日本に呼ぶのも現状では難しい。ウクライナに残っている親族や知人はこれまでのところ無事だが、「みんなすごく大変な状況です。早く平和が訪れてほしい」と話す。
ウクライナ・日本の架け橋は、避難民の必要を見ながら、月1回はこうしたイベントを開催したいと考えている。衣服や靴などはサイズの幅が必要であるため、企業や団体からのまとまった物品寄付は大きな助けになるという。今後のイベントの告知など詳細は、フェイスブックのグループを。